240部分:第十七話 姿の見えない嫉妬その十三
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第十七話 姿の見えない嫉妬その十三
「だから」
「それでなの」
「むしろ多ければ多い程いいから」
「多ければなのね」
「そういうこと。だから重箱三段は大成功」
「よかった。それなら」
椎名の言葉を受けてだった。月美も笑顔になった。ほっとしたような笑顔だった。
「これを陽太郎君にね」
「ただし」
「ただし?」
「狭山が横から取ろうとするから気をつけること」
それはというのだった。
「あいつは意地汚いから」
「狭山君はなの」
「そう。あいつは津島と私で何とかするから」
そして自分もだと述べた。
「ただし注意はしていて」
「うん、わかったわ」
「それと赤瀬は」
「赤瀬君はそういうことしないわよね」
「私が作ったから」
何とでだった。椎名がここで何処からともなく出してきたものは。月美が持っているのよりも二回りは大きい重箱であった。しかもそれは何と七段もあった。
「これを」
「えっ、それって」
その七段の巨大な重箱を見てだ。月美も引いた。
「それが赤瀬君のお弁当なの」
「お握りに玉子焼きに野菜のおひたしに鳥の唐揚げに塩鮭に昆布にデザートが入ってるから」
「それで七段なの」
「赤瀬は巨大だから」
何しろ二メートル近い。椎名と比べると余計に凄まじい巨大さなのだ。
「だからこれだけ」
「全部愛ちゃんが作ったの?それ」
「そう」
その通りだというのだった。
「昨日の夜に」
「そうだったの」
「あいつにはこれだけ必要」
また言う椎名だった。
「だから作った」
「それ持てるの?」
月美が次に言うのはこのことだった。
「愛ちゃん、大丈夫?持って前とか見える?」
「気にしないでいい」
この時もこうした返答をする椎名だった。
「持てるし見えるから」
「そうなの」
「それじゃあ行こう」
その巨大七段重箱セットを両手に持っての言葉だった。顔が隠れてしまう。それどころか上半身もである。椎名は小柄なので隠れてしまった。
だがそれを全く苦にせずだ。彼女は普通に歩く。月美もそれに続く。
そうして校舎を出て校庭の緑の芝生の上に出る。既に陽太郎達がそこにいた。狭山に津島、それと赤瀬もいる。半円を描いてそれぞれ芝生の上に座っている。
まずは陽太郎がだ。七段を持つ椎名を見て言った。
「御前、何だそりゃ」
「お弁当」
椎名の彼への最初の返答はこれだった。
「それだけれど」
「まさか御前のか?」
「違う、赤瀬の」
そして次にはこう答えたのだった。
「赤瀬へのお弁当」
「赤瀬のかよ」
「そう。赤瀬食べるよね」
「うん、頂くよ」
赤瀬からの返事はすぐでしかも平和なものだった。
「有り難うね」
「気にしなくていい」
椎名は赤瀬の前にその弁
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