六話 異端と歩み寄る影
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先程、エルザの日々の行いを知った素振りを見せた冷静な声の者だった。
だが、先程の発言とは大きく印象の変わる言葉使いに少し違和感を感じた。
「構いません。私は、僕は…自分一人だけでは生きていけない。この力は自分の意思で誰かの為に使うと決めたんです」
「己の存在を否定されてもか?」
「今までの人生、僕は否定され続けた。剣聖としてだけ必要とされてきた僕だから分かる。僕個人の自我は誰も必要とはしないでしょう。でも、ラインハルト・ヴァン・アストレアという象徴は決して誰も手放す事はないのだから」
ラインハルトは己の価値を誰よりも知っている。
剣聖として必要とされ、個という自我は必要とされない事は誰よりも知っている。
だから、ラインハルトは弱者という存在に強い憧れを抱いている。
こんな完璧な超人のフリをした紛い物ではなく、一人の弱者として人間として生きていきたい。
「…お前、本当につまらない人間だな」
「えぇ。僕自身もそう思います」
そんな事は自分がよく分かっている。
こんな事でしか役に立てない自分に価値なんてあるのか?
いつも考えるしいつも感じている事だ。
だからこそ、ラインハルト・ヴァン・アストレアは強者でありながら強くあろうとはしなかった。強くなろうとはしても強くあろうとはしなかった。
ラインハルトは普段通り平常心で身構える。
そう。それだけ、後は────いつも通りだ。
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