六話 異端と歩み寄る影
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思っていなかったのだろう。
「何を…したのかしら?」
「何のトリックもありません。ただ、貴女の腹部には夥しい程の血の跡があった。恐らく、アラヤの放った矢の一撃で受けたダメージの跡だと判断し、そこに狙った。それだけです」
「まだ、完全には回復し切れなかったから…それでも…こんな小石程度でやられるなんて私もまだまだ…ね」
「いえ、貴女は相当の手練でした。だから…少し本気になってしまった」
「少し…ね。本当に貴方は化物ね」
「昔からよく言われています」
ラインハルトはゆっくりと歩き始める。
エルザを捕縛するのだろう。腰から動きを封じる為の手錠を取り出した。
これで終わり。
そう、終わりなんだ。
「無様だな、エルザよ」
何処からか響き渡る男の声。
そしてそれと同時に複数の足音が響き渡った。
「まぁ、相手はあのラインハルトだから仕方なくね?」
その声は、とても巫山戯ていた。
「勝てない相手と最初から分かっているなら逃げるべきだったな」
その声は、とても落ち着いていた。
「エルザちゃん大丈夫?」
その声は、とても幼かった。
「日頃の行いが悪いからそういう事になるんですよ」
その声は、とても冷静だった。
「情けない。吸血鬼の端くれはこの程度なのか?」
その声は、とても呆れていた。
そして、それはラインハルトを取り囲むように現れた。
「………」
姿は見えない。
だが、ヒシヒシと感じるこの威圧感は只者ではない。
だが、それでもラインハルトは冷静に状況を見極め、エミリア達の安全に第一に考えていた。
「お初にお目にかかる。剣聖 ラインハルト・ヴァン・アストレア」
その声は、エルザに呆れていた者の声だった。
「貴殿の実力、しかと見させてもらった。流石は、歴代最強と謳われる剣聖だ」
「お褒め頂き、光栄です。ですが、私はまだまだ未熟者の身。この剣も、まだ私を真の主としては認めてはいません」
「かっかっか!そんなに強ぇのに未熟者の身ってお前…そりゃあなんだ?
自分への戒めか?それとも自分は他の奴とは違うってのを主張してんのか?アッ?」
その声は、エルザの事を一応は心配していたが、本当の所はよく解らない巫山戯た声の者だ。
「いえ、そんな事はありません。私は、剣聖として一人の人間として未熟…だからもっと強くならなくてはならない」
「でも、それ以上の強さを求めたら元から化け物じみてるのにもっと化物になっちゃうよ?」
その声は、とても幼い者の声だ。
「もし仮にそうだとしても、助けを求める全ての人々を救えるなら、私は喜んで化け物になりましょう」
「ふむ。自分の為ではなく、他人である誰かの為に使うのはコイツはとんだ自己犠牲野郎…いや、自己中だな。誰もテメェの
なんて本当は誰も頼りにしてねぇかもしれねぇのによ」
それは
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