六話 異端と歩み寄る影
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を整え着地した。
「成程、確かに…貴方は上物……いや、それ以上ね」
「お褒めの言葉、痛み入ります」
相変わらず、ラインハルトは武器を構えない。何も構えず、己の肉体のみで、あの異様な女を圧倒している。戦いの素人であるエミリアですら分かる。ラインハルト・ヴァン・アストレアは最強の騎士であると。
だが、それなのに。最強の騎士である筈なのに…何故だろう。
ラインハルトから『強さ』を感じない。なんと言葉にすればいいのか…強者としての素質は誰よりも持っているのに強者の威厳をラインハルトから感じ取れないのだ。
「貴方、その腰の剣は抜かないの?」
ラインハルトの腰に携えられた剣。
剣聖の名を象徴する龍剣レイドだ。
「この剣は幾つかの条件を満たさなければ使えません。申し訳ありませんが、僕は『コレ』を使わせてもらいます」
そう言ってラインハルトは足元に転がっていた小石を拾う。
「その小石で私を倒すのかしら?」
エルザはこれから起こる何かに期待し楽しんでいる様子だった。
普通なら小石で相手をする…なんて言われたら激情する筈だが、エルザは違った。不満なんて一切感じていない。ただ、楽しめればそれでいいと思っている。
「倒す、とまてばいかないでしょうが…致命傷は与えられると思います」
「あら。それは楽しみね────!」
エルザは駆ける。
周囲の建物の壁を利用しトリッキーな動きで駆け回る。
ラインハルトの持つ小石を警戒しているのだろう。アレだけ激しく動かれたらまず当たることは無いだろう。
まぁ、普通の人間ならね。
ラインハルトは小石を指で弾く。
弾かれた小石は惹かれ合うようにエルザの元へと向った。
「!?」
エルザは高速で放たれた小石をなんとか避ける。そして────ラインハルトの元へ一気に詰めた。
なんて微笑みを見せる女なのだろうか。とても嬉しそうで楽しそうで無邪気な子供のような表情だった。
ラインハルトには理解できない感情だ。
人を殺して楽しめるなんて到底、理解できない。人を傷付けて笑顔でいられるなんて考えられない。理解しようとしても理解できないエルザという女から伝わってくる感情にラインハルトは少しだけ苛立ちを感じた。
いや、違うな。
ラインハルトは怒りを覚えたんじゃない。そうやって本気で楽しめる女の感情に嫉妬した。ただ、それだけなんだ。
「────────────────?」
突如、エルザは倒れ込んだ。
エルザ自身、何が起きて何故、自分が倒れ込んだのか理解出来ていない様子だった。
だが、エルザは気付く。自分の体の異常に。
「これ、は…」
エルザの腹部には小さな小さな小石がめり込んでいた。
恐らく。先程、ラインハルトから放たれた小石の一部なのだろう…だが、こんな小石程度で体勢を崩されるとはエルザ自身も
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