六話 異端と歩み寄る影
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んな所に?」
「あっ。うん。ちょっとよそ見してたらフェルトちゃんとシロウを見失っちゃって…」
「んで、ロム爺に誘拐されたと」
「誘拐なんぞしておらんわ!」
「解ってるよ、ちょっとしたジョークだよ」
そうして、ここまでの経緯を話すとフェルトは「成程な。ロム爺、お手柄だ!」と言ってバルガの方に駆け寄る。
「よっし。んじゃぁ、シロウと合流するぞ!」
フェルトとロム爺はニヤニヤと笑顔で外へ出ようとする。先程の経緯を話している最中に「ここから安全に抜き出せたらお礼する」という発言でやる気スイッチを押してしまったらしい。頼もしいが、この暗闇の中…どうやってシロウを探し出すのか?
「そんな心配そうな顔すんなよ。シロウとは合流するって約束してるから多分、そこで待ってると思うぜ?」
そう言ってフェルトはエミリアの手を握る。
「さっ、早く行こうぜ」
その姿はとても頼もしくて、とても自分よりも幼い女の子とは思えなかった。
少し、羨ましいと感じるのは自分が…無知なのだから?
それとも憧れを抱いているのかも?
「うん、」
エミリアの表情も自然と笑顔になっていた。そしてエミリアもフェルトの手を握り返す。
その姿は歳相応のもので、それを見ていたロム爺は微笑んでいた。
「ロム爺、なんで笑ってんだ?」
「なんでもないぞい」
「きめぇ…」
「うるさいわい」
ロム爺はフェルトの頭を優しく撫で回す。
「や、やめろ」
と言ってはいるが、嫌がっている訳ではない。
この信頼関係はどうやって構築されたのか?
ロム爺は亜人種、巨人族の生き残り。フェルトは普通の人間の女の子。
何故、こうも仲良く出来るのか…?
亜人種であり、ハーフエルフであるエミリアに理解する事は出来なかった。
少なくとも亜人種同士であるバルガは、ハーフエルフであるエミリアの心情を多少は理解できるだろう。だが、普通の人間の女の子であるフェルトが、エミリアの素性を知ったら…。
フェルトはエミリアに何と言葉を掛けるのか?
そんな事を考えると不安になる。
「アルトリアの姉ちゃん?」
「ん、なんでもないよ」
あの人は、私がハーフエルフって知ったらどんな反応をするんだろうか?
遠い、遠い国からやって来た少年は私の事をなんて言うのだろう?
もしかしたら────と淡い希望、願望がエミリアの中を駆け巡る。
そんな事は有り得ないと分かっているのに、なんでそんな事を考えてしまうのか。
この感情は、なんて呼ばれるものなのだろうか?
エミリアの頭と心の中では様々な感情が入り乱れていた。
もし、もしかしたら────────────。
グチャ。
何か、生々しい音。
グチャグチャ。
何処から聴こえてくる気持ちの悪い音。
フェルトとロム爺は身を低く構え、いつでも反応できる
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