艦隊司令部着任
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たからというのが正確なところであったが。
「ようこそ、情報参謀第五室へ」
それが訓練計画を立てる部署の名称であるのだろう。
大きな声と演技のような大げさな動作は、まるで役者のようだ。
フョードル・パトリチェフ。
人数が多すぎて、いまだに誰が登場して誰が登場しなかったか迷うことのあるアレスでも知っている有名人物である。
巨漢で、穏やかな人柄そのままに、アレスを笑顔で迎え入れた。
大きくやわらかな手が、アレスの肩を叩いた。
若干痛い。
この行動はよくあることのようで、周囲の視線もまたかといったような様子だった。
最も声が大きいのに間違いない。
いつの間にか眉間にしわを寄せたアロンソが、パトリチェフの背後に立っていた。
「パトリチェフ少佐。そんなに騒ぎたいなら、ここじゃなく個室を用意しようか」
「ま、マクワイルド大尉。そんなわけでさっそく仕事だ、このコピーを三十部。大至急でだ」
そうして、アレスの初日は始まった。
+ + +
訓練を三月に予定し、二月の頭のこの時期は一番忙しい時期であったのだろう。
訓練場所の選定、他の艦隊との日程調整、補給物資の依頼等、細々としたものが多い。
その中でもアレスが一任されることになったのが、要は雑用だ。
簡単なものではコピー、他にも細々とした申請書類や定例的な報告書の作成。
まさしく、カプチェランカの異動前にアレスがワイドボーンに対して言ったそのままのことが仕事として目の前にきている。
最初の一週間は、アレスはそれらをこなした。
新人の仕事など、数十年以上前に経験したことであったが、さすがに情報参謀での仕事は初めてのことだ。知らぬことを覚え、しかしながら、基本的なことはやはりどこの世界でも変わりがない。
与えられた仕事を淡々とこなしながら、アレスは周囲を見ていた。
今は二分ほどでできるようになった、定例の報告書をまとめ上げたアレスは、端末の前で手を止めた。
周囲ではみんな忙しそうに自分の仕事をこなしている。
そうして、上がってくる報告に対してパトリチェフが適切に指示を出す。
さすがはエリートが集まるといわれる作戦参謀ということなのだろうか。
だが、そうしていて問題となる部分がないわけではない。
それは作戦参謀だけであるのか、あるいは前線においては全てであるのか。
絶望的な情報伝達の少なさだ。
これが後方勤務本部であったのなら、他の部署の仕事は自分の仕事にも関わってくるため、細かなことでも電話や書類で情報のやり取りを行う。ところが、作戦参謀では定例的な報告はあるものの、リアルタイムで動くことが後方勤務本部と比べて圧倒的に少ない。
同じ情報参謀同士でも、朝にその日の状況報告と任務
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