239部分:第十七話 姿の見えない嫉妬その十二
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第十七話 姿の見えない嫉妬その十二
「それでつきぴーにもいくかも」
「私にもって」
「あのまま自分自身も壊してしまいそう。それに巻き込まれるかも」
「私が」
「そう、つきぴーが」
月美を見てだ。そうしての言葉だった。
「そうなったらまた。動く」
「あの、愛ちゃん」
月美は椎名の言葉に何やら剣呑なものも感じていた。そこには確かな決意を見た。そのうえでまた彼女に話すのだった。
「何考えてるの?」
「これまでと同じ」
「同じって」
「私はつきぴーの友達」
その目には表情はない。だがそこには確かなものがあった。
「だから。ピンチの時には」
「その時には?」
「何とかする」
こう話すのだった。
「そうするから」
「それはいつも聞いてるけれど」
実際に何かにつけ月美も聞いていることだった。そして月美もまたそれは同じである。彼女もまた自分のできることで椎名を助けてきている。そうした意味でも二人は本当の意味での親友同士なのだ。
「いつも有り難う」
「御礼はいい」
これもいつもの椎名の言葉だった。
「ただ」
「ただ?」
「その時は何とかするから」
また話す椎名だった。
「任せて」
「うん、それじゃあ」
「今はそれだけ」
椎名の話はとりあえずこれで終わった。
「それじゃあお昼行こう」
「お昼ね」
「斉宮達が待ってる」
何気に陽太郎の名前も出した。計算してである。
「だから。急ごう」
「お昼だけれど」
「何かあったの?」
「あの、これ」
恥ずかしそうな顔であるものを机の上に出してきた。それは。
重箱であった。三段重ねである。それを白い風呂敷に包んでだ。そのうえで椎名に見せてきたのである。
「これだけれど」
「自分で作ったのね」
「うん」
椎名の問いにこくりと頷いて答える。
「そうなの」
「斉宮の為に」
「陽太郎君って色々好きなもの多いわよね」
「はっきり言えば何でも食べる」
椎名は彼の好みも既に知っていた。
「だからそれは」
「いいの?」
「気にしなくていい」
そうだというのだった。
「あいつの食べ物の好き嫌いは」
「とりあえず好きだって聞いたものを入れたけれど」
「どれ位?」
「十品位」
これだけの数だと話す。
「品数は」
「量もあるのね」
「うん。やっぱり多過ぎるかしら」
「数も量も気にしなくていい」
ところが、だった。椎名はこんなことを言ってきたのだった。
「それはいい」
「いいの?」
「好き嫌いもだけれど気にしなくていい」
椎名はまた月美に告げた。
「全く気にしなくていい」
「それはどうしてなの?」
「男子生徒で運動部だとどれだけ食べても足らない」
言うのはこのことだった。
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