Fireworks
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いいのか? あんなにこだわっていたのに」
「みっくんのためだからこだわったんだよ? 私は金魚より食べ物がいいのー」
「即物的というかなんというか……」
「ま、そういうことで!」
ビニール袋をみっくんの手に押しつけるようにして。
「帰ろう!」
みっくんと手をつないで。星光る夜道を歩いて帰った。
★
そのあとみっくんと少し話をして、みっくんにあげた金魚の名前を決めて。それで私とみっくんは別れたの。
別れた途端だるくなって、押し寄せた眠気。
そうだよ私、無理してた。あんなに歩くなんてできなかったのに。
でも思い出がほしかったんだよ。
永遠に記憶に残る、私のひと夏の思い出が。
だから無理した。だから平気なふりして歩いたの。
ああ、息が苦しくなる。
――みっくん、みっくん。
……次に誰かと付き合うときは、長生きできる子を選ぶんだよ――――?
★
それから一週間後に火花は死んだ。安らかに、眠るようにして。
あの子が渡した赤い金魚。今なら意味がわかるんだ。
どうせ私は死ぬから、この子を私と思って育てて、泣かないで。
どこまでも優しくて、どこまでも無邪気で。どこまでも強がりで、どこまでも残酷で。
そんな火花は僕の心に、消すことのできない暗い炎をつけた。
僕はこれから彼女の死を抱えて生きることになるのだろう。あの優しくて残酷な、ひと夏の思い出とともに。
金魚の名前はファイアワークスにしてと、あの子が言ったんだ。
その意味は花火。
あの子は知っていたのだろうか。近いうちに自分が死ぬことを――。
ゴーン、ゴーン。重苦しい鐘が鳴る。
今日はあの子の葬式の日だ。
もう空に花火はなくて、ただ波の音だけが変わらないけれど。
僕は心の中で君に問うた。
――火花、火花。
僕は、あなたの、
……幸せになることが、できましたか――――?
儚く散った鮮やかな火花は、もう二度と戻らない。
◇ ★ ◇ ★ ◇ ★ ◇ ★ ◇ ★ ◇ ★ ◇ ★ ◇ ★
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