暁 〜小説投稿サイト〜
気まぐれ短編集
Fireworks 
[2/4]

[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話
を抱きあげたの。私、笑っちゃったぁ。
「……火花?」
「いやだなぁ、みっくん……。大げさだよぉ。立てなくなっちゃっただけだもーん」
 病気の理由も原因も、全くわからないんだ。でも私の身体は確実に、死へと向かいつつあったの。
 心配げな顔で、みっくんは私を背負い上げた。ついでに足に赤い草履を履かせてくれた。
「……無理はするなよ?」
「しないしない。じゃあ花火にはまだ時間あるし、夏祭りの屋台を回ろうよ?」
 この時期、私の病院のある地区では花火大会が開催されるんだ。でね、それと同時に屋台もできるの。今日は花火大会最終日のはずだから、きっと賑わっていると思うの。
 楽しみだなぁ。
「みっくん、ゴーゴーゴー!」
 生憎と、私は無理する気でいるよ?
 だって最後の夏なんだもの。無理したって、楽しむんだから。


 みっくんと一緒に屋台村に向かった。みっくんは私に訊いた。
「火花は何食べたい?」
 背負われたまんまの私は答えた。
「ふわっふわの綿あめー!」
 あれを食べたのはいつ以来かなぁ。甘いあの味、ふわふわ食感。思い出すだけでうれしくなって。
でも私を背負いながらだと、みっくんはうまく会計できないんだよね。だから私はみっくんのポッケからお財布を取り出して、勝手に会計を済ませてしまった。
「お、おい火花?」
「みっくんは私を楽しませるために頑張るのです!」
 みっくんの驚いた声に、私は無邪気に笑って返した。
 片手に綿あめを持って、もう片方の手にはみっくんの財布。
 私はみっくんの財布を浴衣の袖にしまって、明るく笑った。
「ねぇねぇ! 金魚すくいやりたいな!」
 なんか立てなくなっちゃった私は、係の人に椅子を貸してもらって金魚すくいをやってみたんだ。
 綺麗な赤い金魚がいた。浴衣を着た私みたいな。
だから私はその子を狙って、何度も網をくぐらせたんだけど。結局網は破れちゃって、その子は捕まえられなかったんだよね。
 思わず半泣きになった私の頭に大きな手が乗った。
 金魚すくい屋のおじさんが、私に透明なビニール袋を差し出していた。 
 そこを泳いでいたのは先ほどの金魚。
「……いいの?」
 思わず私が尋ねれば。
「おまけだよ、お嬢ちゃん」
 白い歯を見せて、おじさんはニッと笑った。
 嬉しくなった私は笑顔になった。


 ラムネも飲んだしかき氷も食べた。レモン味のかき氷はつんとさわやかで、切なく痛む味がした。
 みっくんの隣に座って、片手にかき氷の椀を持って、
 見上げた空。
 暗くなっていく空、夕暮の空に、
 不意にアナウンスが響き渡る。
「みなさん、みなさーん! これより、花火大会を開催しまーす!」
 そんな声がしたから。
「海まで行こうか?」
 笑うみっくん。
 私は二
[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ