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気まぐれ短編集
Fireworks 
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〈Fireworks〉


「私、花火が見たいの」

 その日、私は言ったんだ。
 夏の終わり。病気だった私はまだ花火を見ていない。
 だから好きな人に言ったんだ。
「私を連れてって」

  ★

 私、天野火花(あまのひばな)。高校二年生だよぉ。生まれつき大きな病気を背負っていて、高校三年生までは生きられないらしいって。
 でも別にいいんだよ? 私は火花。この名前である時点で……長くはない命だったのかもしれないし。それに今、私はリアルに充実しているんだ! 病人がリア充だよ? あははははは、笑っていいよ?
 私は高校二年生。で、来年には死んじゃうんだって。だから今年見る景色が私の最後の記憶になるの。私には来年なんてないんだし、ね。
 というわけで、私は恋仲のみっくんに連絡を入れたんだ。
「花火が見たい」って。
 夏は私の好きな季節なんだもの。どうせ死ぬなら最後、夏の風物詩を見届けてから死にたいなって、できれば海辺で花火を見たいなって、そう思ったの。素敵でしょう?
 みっくんには申し訳ないけれど……。最期のわがまま、付き合ってよ、ねぇ?


 しばらくしてからみっくんが私の病室までやってきた。
 ちなみに近頃の両親は、私のやることに対して何も言わなくなった。私が彼とどこへ行ったって、みんな好きにさせてくれた。
 だから今日彼が来たって、両親は何も言わなかったわ。
 やってきたみっくんは、涼やかな青の浴衣を着ていた。その手には赤い浴衣を持っていた。私の分だよね、絶対!
 みっくんは優しく笑って言った。
「火花? 花火見るって言うから持ってきたよ」
 彼は優しく微笑んで、私に浴衣を手渡した。
「着替えられる? なんなら看護婦さん呼んでもいいけど」
「大丈夫。みっくん、外で待っててね」
 私は浴衣を受け取って広げてみせた。女の子らしい赤い花柄に白いかすみ草、黄色い福寿草。とっても可愛らしくて素敵だ。
 福寿草の花言葉は「あなたに幸福を」だっけか。見ていて嬉しくなってきた。
 浴衣を着る。病気は大丈夫かって? これは慢性的だもん、浴衣を着るくらいどうってことないわ。
 でもね、病気は確実に私から力を奪っていったんだ。
 帯を結び終わって。ここでは草履を履けないからスリッパのままで、よしっと歩き出そうとしたら。くたっ、急に足が崩れてそのまま、立てなくなっちゃったんだよね。
 ナースコールを押そうにも、私は今ベッドにいないし。
 困った。うーん、困った。
 だから呼んでみることにしたんだよ? あまり大きい声は出せないけどさぁ。
「みっくーん……」
 そうしたらさぁ、笑ってよねぇ。小さい声で呼んだのに、みっくんったら血相抱えてドア開けて。
「火花!? おい大丈夫かしっかりしろ!」
 大騒ぎで私
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