Heathaze
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燃え盛る炎は。
美しくも残酷で、魅力的でも残虐で。
まるで過ぎ行く夏を送り出す、人を火種にした送り火のようにも見えた。
そしてその光景を目の当たりにして。
僕は気づく。
これは、二十年前に起きた、あの事故なのだと。
何の因果か僕は偶然、あの事故の日に迷い込んで。その日に起きた惨状を今、その目に焼き付けている。
「……成程。こんな惨状になれば、もう二度と夏祭りは行われない」
小さく呟き、僕は納得した。
炎の中。魂消るような悲鳴が上がる。
こうして、この町から夏祭りはなくなった。
視界の端に、銀色に光る陽炎がゆらゆらと揺れているのが目に映った。ああ、僕をこの日に連れてきた、あの陽炎だ。
僕はそれに向かい、ふらふらと近づいて行く。
そして。
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ふと気づいたらそこは僕のよく知る場所だった。
うだるような熱気は変わらないが、あのどこか涼しげな雰囲気はもうない。
ピーヒョロロと間抜けな笛の音も。子供たちの笑い声も。
燃え上がる屋台と血と悲鳴。阿鼻叫喚の光景も。
何もない。
ああ、戻ったんだなと思った。
あの夏祭りの一日から。
二十年前の悲劇の日から。
残暑残る八月の午後。
時間は一切経っていない。
あれは幻だったのだろうか。僕が見た、あれは。
視界の端にゆらゆらと、銀色の陽炎が目に映る。
しかしそれはすぐに消え、夏の暑さのひと欠片となった。
あれは幻だったのだろうか。あの銀色の、陽炎の見せた。
今となっては確かめようもないけれど。
僕はあの瞬間、二十年前のあの日にトリップしたんだ。
空を見上げれば、灼けつくような日差し。
耳を澄まさずとも聞こえる、やかましい蝉時雨。
僕は思い出を抱き、前へと一歩踏み出した。
――夏休みも、あと一日。
もうすぐ新学期が、始まる。
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