ヒーロー基礎学
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)は談笑しながら家に帰った。
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翌日の早朝。誰もいないリビングで一人、朝食を摂る緋奈。 テレビのニュース番組のアナウンサーの声とパンを咀嚼する音、味噌汁をすする音、牛乳を飲み込む音、そして、食器の音だけが桜兎家の日常の音。他の家のように、母親が朝食を作り、家族みんなで食事をする。 そんな普通はなくて、いつも一人で朝食を作って、一人で食べる。これが緋奈にとっての普通。
「・・・もぐもぐ」
残り少しとなったパンを口に放り、牛乳で流し込む。そして、食器を片付けようとすると、
ピロン♪
と通知の音が机に置かれた携帯から鳴った。緋奈は携帯を手に取り、液晶画面に表示されたメッセージに目を通す。
『お母さん:洗濯物干しといて』
緋奈はそのメッセージに、
「実の息子におはようもなしか」
そう呟き、返信せずに携帯を机に戻す。そして、食器を片付けて洗面所に向かい、歯を磨き髪を整え、顔を洗う。
「また怖い顔してる」
鏡に映る自分の顔を見て、ため息をつく。あの様なメッセージが来る度に、不機嫌な顔になってしまう。
「まぁ、いつもの事だ。 忘れよう、あんな人達」
緋奈は頭を振って、2階に続く階段を上り、『緋奈ちゃん?の部屋』と自分が生まれた頃に母親が書いてくれた小さなブラックボードが掛けられた扉を開けて、中に入る。
壁にはかつてポスターが貼ってあった跡が残っている。まだ4歳の頃はヒーローに憧れていた。 ゴミ箱にはヒーローコスチュームを身に着けた父親と母親の映ったポスターがグシャグシャに丸めて捨ててある。他にもヒーロー雑誌やグッズなどのヒーロー関連の物は全て捨てた。だから、部屋に置いてあるのは、本棚とクローゼット、ベッドと勉強机のみ。本棚には辞書や推理小説等のヒーローと全く関係の無いジャンルだけ。 勉強机の棚にも、雄英高校の教科書だけしか置いていない。 それは15歳の少年の部屋にしては殺風景だった。
「そうえば、今日からヒーロー基礎学だったっけ?」
クローゼットから雄英高校の制服を取り出し、ベッドに置いて、パジャマを脱ぎながら、壁に画鋲で留められた時間割表を確認する。
「となると、コスチュームは今日届くってことかな。 まぁ・・・僕にとってはどうでもいい事だけど」
緋奈は興味なさげに呟いて、片手鞄に必要な教材を詰め込み、しっかりと制服を整え、自室を出る。階段を降りて、2階の廊下の電気を消し、リビングに戻る。 時計を見てまだ登校時間には早いのを確認して、テレビリモコンを操作して、他のニュース番組に切り替えて、ソファに寝転がる。先程から、机に置きっぱの携帯の通知がうるさいが、どうせ親からだし、と無視を決め込んで耳を両手で押さえる。しばらくそうしていると、
ピンポーン♪
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