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豹頭王異伝
転換
希望の種
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 ユエルスの報告書は簡潔ですが情勢を的確に纏め、他の者から届いた報告とも符合します。
 ゴダロ一家の護送任務が済み次第、トーラスの情報工作班を指揮させては如何でしょうか。

 事後の報告とはなりますが、イシュトヴァーン陛下に不都合とも思えません。
 カメロン殿の話では、モンゴールの面倒を見るのは真っ平と仰られた筈。
 ユエルスに諸外国の介入を見張らせておけば、放置しても構いますまい。
 クムの暗躍には気を付けねばなりませんが、好都合の展開ではありませんか?」

「まあ、確かにな。
 ユディウス殿の見方は間違っていない、その通りだと思う。
 過ぎた事を言っても始まらん、建設的に話を進めるしかない。
 話を聞いて貰って、良かったよ」

 ユディウス・シンは誠意を込めた会釈で応え、カメロンも微笑。
 ドライドン騎士団の副長ブランが執務室の扉を開け、2人に酒杯を手渡した。


 オリー達お喋り連は飽きる事無く毎日毎晩、カメロンへの賛美を無限に繰り返す。
 毎晩泊まる場所と聴衆が変わり、常に熱狂的な反応に迎えられた。
 一行が出発すると噂は燎原の火、枯れ草を焼く野火と化し益々大袈裟に吹聴され拡散。
 カメロンも予見し損なった想定外の事態が生じ、モンゴール中に異様な熱気が渦巻いた。

 元提督は本人の知らぬ間に光の公女、大公家を守護する救世主とされてしまっていたが。
 一時の激情により悪魔の子、ドリアンと命名された罪無き赤子も同様である。
 父親たるゴーラの冷酷王への怨念を込め、ドールの子を意味する悪名を免れた。
 薄倖な公子ミアイルの名は、モンゴール復活の希望を象徴する運命の子へ。
 新生ゴーラの正統なる王子、光の公女アムネリスの愛児へ受け継がれる事となった。
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