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豹頭王異伝
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希望の種
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慎重に観察し更に人数を絞り込む。

 ゴダロ一家が出発する頃には、トーラス全域から祝福の言葉を贈る為に人々が殺到。
 往時の騎士団出征を偲ばせる程の市民が集い、一家を見送る盛大な御祭り騒ぎに発展する。
「アムネリス様、万歳!
 ミアイル様、万歳!!
 モンゴール、万歳!!!」
 人々の興奮と熱量は膨張の一途を辿り、トーラス中に絶叫が鳴り響いた。

 打ち拉がれた人々の心に希望の明りを灯し、久々に明るい未来を感じさせる話の種。
 《ミアイル王子》誕生の噂は瞬く間に、モンゴール全土へ広まった。
 カメロンは2人の赤子を案じ安全な道中を優先、ユラ山地越えを諦め人口の多い平野部を選択。
 モンゴール出身の騎士達が護衛する馬車は頻繁に休憩を挟み、カダイン街道を着実に進む。
 誰もが戦乱で失明したゴダロや片足を失ったダンに友人知人を重ね、同情や激励を繰り返した。

 モンゴール南部の村々に泊まる度、お喋りな女性陣は疲れを知らず払暁まで囀り続ける。
 オリー達は自覚の無い鎮撫工作、宣伝活動を南西部カダイン・オーダイン地方で展開。
 人口の多い地方に噂は浸透し、燻り続ける反乱の火種は嘘の様に消え去った。

 一時は虫の息となった老父ゴダロも連日連夜、激励の声を掛けられ気力と体力を回復。
 ダンは安堵の溜息を吐き、神々や精霊達に感謝の祈りを捧げた。
 アリスの産んだ男女の双生児はユリア、オロと名付けられている。
 吟遊詩人マリウスの妻タヴィア、オクタヴィアの母ユリア・ユーフェミア。
 スタフォロス城で戦死した長男、オロの名を受け継いだ事は言うまでも無い。
 煙とパイプ亭の若夫婦が授かり、多くの人々に祝福された双生児。
 トーラスのオロとユリアは明るい未来の象徴、モンゴールで1番有名な赤子となった。


 ドライドン騎士団に採用された騎士、ユエルス隊長は総てを見ていた。
 ゴダロ一家の安全を保障する為、周囲を警戒する部下4人も同様である。
 トーラス出身の騎士達に抜かりは無く、情報収集も怠らなかった。
 モンゴールの治安が急速に回復する模様に驚き、詳細な報告を送っている。
 イシュタールの一角に早馬が着き、カメロンも想定外の展開に眼を瞠った。

「こいつは、しくじったな!
 トーラスを出る前に、オリーの口を止める方策を講じるべきだった。
 アムネリス付きの女官共にも緘口令を敷き忘れてるし、俺も焼きが廻ったかな?
 王子の出産は兎も角、ミアイルの名が一気に拡がっちまったのは拙い。
 イシュトが知れば、モンゴール独立を俺が画策してると勘繰りかねんぞ」

「ゴーラ王国の安定化を図る者としては、非常に有難い展開だと思われませんか?
 モンゴール領の鎮撫工作費は不要となり、警備隊の減員と駐留費の削減も可能。
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