236部分:第十七話 姿の見えない嫉妬その九
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第十七話 姿の見えない嫉妬その九
「私がいいって言ったらいいのよ」
「そう、ですか」
「そうよ」
星華は出来るだけ強い声で月美に圧力をかけた。
「わかったわね、それで」
「はい・・・・・・」
「全部出るから」
星華はまた言った。
「当然マラソンもね」
「わかりました。それじゃあ」
「わかったらいいわ。ちゃんと書いておきなさいよ」
三人をバックにして言い切ってみせる。ところがここでだった。
椎名がだ。ぽつりとした口調で呟いたのである。
「出るのはいいけれど」
「!?」
「考えた方がいい」
星華は見ていない。しかし確かに言った。
「ちゃんと。考えた方がいい」
「どういうことよ、それって」
「だから。考えた方がいい」
また言う椎名だった。
「自分のことと競技のことは」
「何が言いたいのよ」
「無理はしないこと」
そしてまた言った。
「それだけ」
「何よ、それ。忠告のつもり?」
星華は椎名を見据えて突っかかった。
「生憎だけれどね、女子バスケ部は鍛え方が違うのよ」
「慢心や自惚れは墓穴」
だが椎名は再び呟いた。
「無理はしない」
「無理じゃないわよ」
星華の言葉は虚勢になってきていた。彼女が意識しないうちにだ。
「全部の競技でね。一等取ってやるから」
「クラス全体の競技にも出て」
「そうよ」
その虚勢を再度椎名にぶつけた。
「そうするわよ。女子バスケ部の力見せてやるわ」
「ならそうしたらいい」
椎名の言葉はここでは突き放しだった。
「そこまで言うのなら」
「大体ね、あんたね」
星華は言い切ってもだった。気持ちが収まらずに椎名にさらに言った。攻撃せずには止まらない、まさにそうした感じであった。
「何でここにいるのよ」
「ここに」
「そうよ、うちのクラスによ」
こう椎名に言った。
「何でいるのよ」
「いて悪いの」
「悪いわよ」
むっとした顔で椎名に返す。
「あんた三組じゃない」
「うん」
「ここは四組よ。それで何でいるのよ」
「つきぴーの友達だから」
だからだと返す椎名だった。
「それで」
「それでってそれが理由!?」
「そう、だから」
あくまで冷静な口調の椎名だった。
「それでいるだけ」
「それでってね。そんなの理由にはならないわよ」
椎名にさらに突っかかる。完全に戦闘態勢だった。
「何度も言うけれどここは四組なのよ」
「校則に書いてあるの?」
「はぁ!?校則!?」
「そう。書いてあるの」
椎名は月美の席の横に座っている。そうしてそのうえで星華を見上げている。その態勢で自分に突っかかる星華と対峙しているのだ。
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