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獣篇V
34 安易に博打には手を出さない方がよいことがある。
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部屋に入ってきた万斉(かれ)は、わたしの顔色を見て、表情を変えた。

_「晋助?零杏?どうしたのでござるか?大丈夫でござるか?」

_「ええ。大丈夫ですわ。心配をおかけしてすみません。」

_「まァ、いろいろあってなァ。一段落ついたから、良かったけどな。」


_「そうか、ならばよいのだが。零杏、決して無理はせぬようにするでござる。」

_「…ええ。ありがとうございます、万斉先輩。」


置いておくから、ゆっくり飲むでござるよ、と言ってテーブルにスープを置いたあと、万斉は部屋を立ち去った。

万斉が去ってから、テーブルの上のスープに手を付けた。と言ってもまだ、晋助(かれ)は私を抱えたままである。

_「いつまで抱えるの?」


我ながら、悲しくなるくらい掠れた、弱々しい声だった。

_「そうさなァ。永遠でもいいぜェ?」

_「フフ)そう。ならお願いしようかしら?」


スープに口をつける。
優しいコンソメ味だ。


_「スープを飲んだら、華蛇に麻酔薬を打たなきゃ。もう少しで到着だったかしら?」

_「そうだ。着いたらオレがサポートにつくから、安心して続けろ。」


テロリストが意外と優しいことが、ちょっと面白い。

_「分かったわ、ありがとう。」


スープを飲み終えた私は、カップを食堂のレーンに置き、晋助と一緒に華蛇の待つ牢獄へ向かった。

***

必要な道具を持って牢獄へ行くと、
先程よりももっと(やつ)れた姿で未だに華蛇(かのじょ)は賭博をやっている。

_「私、確か彼女の賭けに勝ってからあんなことが起こったのよね?」

_「確か、そうだったなァ。オレは負けたが。あれは勝っても負けてもどっちにしろ不幸なことが起こる、呪いの博打ってやつじゃァねェか?」

_「縁起でもないこと言わないでよ。まさにさっき、私が死にかけたんだから。…さ、じゃあ彼女に麻酔薬打つから、少しばかり手伝ってね。」

と言って、私は牢獄の鍵を開け、
華蛇(かのじょ)の側に腰かける。

小さく呪文をかけて動作を止めた隙に、麻酔薬を打った。打ち終わってから時間を解放する。もちろん忘れよの呪文も忘れずに。

_「よし、もう打ったから大丈夫。あとどれくらいで着きそう?」

_「もうすぐじゃねェのか?」


すると、春雨の船とのドッキング体制が整い、今からゲートを開ける準備を行います、という館内放送がかかった。

_「本当に着いたのね。」

と言って手錠を取り出すと、彼女の両手首にかけた。
かけ終わったところで、ドアの方がガヤガヤし始めたので、そろそろ係の者が到着する頃だろう。すると、ごっつい男たちがやって来て、私たちに告
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