閑話 それぞれ2
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は何らの手落ちもない。むしろ同盟軍の方が馬鹿だったというわけだ。腐敗は歓迎ではあるが、腐敗に慣れて危機感がなくなるというのも考えものだな。他山の石として、アーク社の方でも腐敗に慣れてミスをすることのないように気をつけてくれれば、それでいい。だが」
続く言葉を言って、ルビンスキーは机上に置かれたタブレットに視線を這わせた。
今回の件についての、詳細な報告書―−そのデータだ。
何度か読み直したとしても、ルビンスキーの結論は契約書自体には不備は見当たらないということだ。むしろ、向こうの意見はともすれば、言いがかりにも近いものだ。
だが、実際に担当する者にとっては言いがかりであったとしても、契約書に書かれている点をつきつけられれば、戸惑うのも無理はない。その戸惑った精神状態で無理やり反論すれば、当然その場しのぎに近くなる。
その点を実に上手く敵はついてきている。
おそらくは装備計画課の不正がなかったとしても、何だかんだとアース社が大きな負担を負うことになっていただろう。
結局、契約書自体に問題はない。
だが、契約書から派生する交渉が実に上手い。
こうして客観的に見ているからわかることもあるが、その場にいたら理解ができたか。
最もルビンスキー自身であれば、まず考える時間を作り出すことにしただろうが。
「見事な交渉の手際だな。軍人よりも企業人に向いている」
「小僧だと油断いたしました。最初から私が出向いていれば」
「何とかなったかもしれんが、何ともならなかったかもしれないな」
「私が信じられませんか」
「信じるか。何度も口に出したことはあるが、誰かを信じたことなど一度もないな。君はあるのかね?」
「愚問でした、失礼を」
「かまわない。それに敵を過小評価するよりも、過大評価をしておいた方がいい。たかだか中尉――いや、今度は大尉になるのだったか――どちらにしろと厄介な相手だとね」
「……いかがいたしましょう」
「ん、取り込むという事か」
「ええ、役には立ってくれそうです。だめならば、消すだけです」
男の言葉に、しばらくルビンスキーは黙った。
瞳だけがモニターの前の男をとらえている。
何度か指が机を打った後。
「やめておこう。拙速に動いて何とかなるような相手ではなさそうだ。それに一度失敗しているのだろう」
「あれは邪魔が入ったからです。邪魔が入らなければ、こちらの計画通りになっていたでしょう」
「そうだろうかね」
ルビンスキーは青年の言葉を遮るようにして、反論の言葉を出す。
「その点も報告を読んだが。むしろ相手の手の内であった気がするね」
「どういうことでしょう」
「喧嘩をさせて、しばらく仕事をさせないということだったが、喧嘩にならなかったらどうにもならないだろう」
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