閑話 それぞれ2
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最も一番の間抜けはそれに気づかなかった俺だがね」
店員がブランデーを二つ、二人の前に置いた。
同時にヤンの前には、つまみのピーナッツが置かれる。
多いグラスをヤンが手にして、キャゼルヌが手にしたグラスを、あげた。
「乾杯」
どちらともなく、二人は声に出して、グラスに口をつける。
キャゼルヌはため息混じりに息を吐いた。
「そう考えると、セレブレッゼ少将はさすがだな。今回の件といい、装甲車の改修の件といい、見事なものだ。下までよく見ていられるということだろう。忙しさを理由にして、甘えていたということだろうね、私自身も」
「単に……下が優秀だったのかもしれませんよ」
「部下が馬鹿でも優秀でも、全ては上の責任だよ、ヤン少佐。これは覚えておくといい」
「覚えておきますよ」
ヤンが小さく笑って、グラスを傾けた。
「お子さんはお元気ですか」
「ああ、元気すぎて困るくらいさ。最近ようやく歩けるようになったからな、行動範囲も倍になった」
「大変そうですね」
「何他人事みたいに話しているんだ、ヤン。お前だってすぐにそうなるぞ」
「私はいいですよ。それに、作戦司令部にはいい人もいませんし」
「待っていても、シャルロットはお前にはやらんぞ、ヤン」
「例えシャーリー・ローレンスだったとしても、先輩をお父さんと呼ぶのはごめんです」
ヤンが最近売れている映画女優の名前をあげて、断った。
そのことに、キャゼルヌがむっとして、ブランデーをあおる。
とんと音を立てて、カウンターにグラスが置かれた。
「シャーリー・ローレンスに負けるというのか」
「どうして、そこから離れないのですか」
「ふん。お前も子供を持ったら、家庭の温かさがわかるさ」
「私は子供以前の問題ですね」
「自信を持っていう事じゃないな」
キャゼルヌは苦笑して、笑った。
+ + +
アドリアン・ルビンスキー自治領主
「その件は了解している。君らも、そしてあちら側も問題がないのであれば、いいことだ。むしろ、早く手を引いてよかったとも言える。長引けばもっとダメージも大きかっただろう」
「申し訳ございません」
と、テレビの前で眼鏡をかけた青年が深く頭を下げた。
まだ若い。年齢も三十手前の青年であろう。
眼鏡をかけた切れ長の瞳が画面の奥からルビンスキーを見ている。
「それに報告書は読ませてもらった」
そう語るのは禿頭の男だ。
こちらも若い。といっても、禿頭の男――アドリアン・ルビンスキーの年齢は四十を超えている。だが、わずか四十代で帝国と同盟に次ぐフェザーンで、自治領主を務めている。
こちらをとらえる視線をまっすぐに受けたままで、ルビンスキーは言葉を続けた。
「この件については、そちらに
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