閑話 それぞれ2
[2/6]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
いて返せば、二人は同時に踵を返した。
この場所は寒すぎる。
そして、長くいれば、ずっといたくなる。
静かな帰り道は、再び枯れた芝を踏みしめる音が鳴った。
しばらく歩いて、やがてドワイト・グリーンヒルは重い口を開いた。
「学校はどうだ」
「うん、厳しいけれど、楽しいわ。戦術シミュレートは残念だったけど」
「ああ。あの集団シミュレート訓練か」
過去にグリーンヒルも教頭をした経験があったが、その当時は大会などといったものはなかった。
近年になってシドニー・シトレ大将が校長時代に取り入れたものだと聞いている。
イベント好きなお方らしいことではあったが、
「楽しむのは結構だが、シミュレート訓練の本来の目的を忘れてはだめだ。シミュレートで勝ったところで、本番で勝てなければ意味がないのだからな」
「ええ、わかっているわ、父様。でも、私も本戦の場所にいたいと思った。みんな凄かったんだから。父様も一度見に来ればわかると思うわ」
いささか興奮したように話すフレデリカに、ドワイトは若干の戸惑いを覚える。
子供のガス抜き程度に考えていたのは、間違っていたのだろうか。
だが、それよりも娘が楽しそうなことの方が嬉しかった。
仲間に恵まれたことは良いことだ。
「友人はできたのか?」
「ええ。前にも話したことあると思うけど、凄い友達よ」
「フレデリカの話は、少し大げさすぎるからな。話半分に聞いておかないと」
「そんなことないわ」
「そういう事にしておこう」
頬を膨らませた姿に、小さく笑った。
息が白い。
「寒くなって来たな、今夜は暖かいものでも食べに行こうか」
「あら。せっかく一緒なのだから、ご飯くらい作るわよ」
「フレデリカ。私は暖かいものが食べたいな」
首をかしげるフレデリカに、もう一度強く言って、ドワイトは歩き出した。
平和な光景だった。
願わくは――それが続くように。
そのためにドワイト・グリーンヒルは危険なイゼルローンへと立ち向かうのだ。
軍人である以上、娘もまたいつかは危険な場所に向かうのだろう。
だが、あと数年であるが、平和な環境にいてくれることに、ほっとしている。
果たして、そのことを妻は許してくれるだろうか。
隣でうつむく顔が、上がった。
「アツアツのグラタンって、パンにはさめるかしら」
そうではない。
+ + +
アレックス・キャゼルヌ大佐。
間接照明が光る薄暗い店内。
色づいた木の壁が、年を経たことを現していた。
丸いテーブルとソファ付きの四角いテーブルが、やや広めに配置されており、重厚な木製のカウンターの向こうには、何種類もの酒瓶が並んで、自己主張をしている。
落ち着いた雰囲気の店内から
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ