第54話
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れたのは音々音だが、彼女の護衛が全ての小石を弾いた。
こうなればもう憂いはない。後はアレを破壊するだけだ。
「ん、返す」
「まったく……お前という奴は…………」
「?」
「頼りになる。そう言った!」
投石機から護衛の騎馬隊が向かってくる。数は三千程度。
決死の時間稼ぎだろう。大炎もろとも礫石を使うつもりだ。
「無駄だ、今の我々は誰にも止められん!」
華雄の咆哮に呼応するかの如く、十倍の精鋭を弾き飛ばしながら進軍していく。
まるで素通りだ。曹操や郭嘉の両名が、大炎を恐れ、大計を持って屠りたがった理由がこれだ。
戦術や策の常識を正面から食い破る。ただ単純な武力で……。
「魏軍が退いていく!?」
「今です、投石機を確保するです!」
適わないとみるや魏軍はすぐに退いた。騎馬を中心に工兵達を護衛しながら下がっていく。
「矢が来るぞーッ」
「無駄だ。我々に矢は――」
「火矢だ。奴らの狙いは投石機だ!」
「しまった。投石機を守れ」
巨大な建造物である投石機は守り切れず、下がりながら魏軍に放たれた火矢を浴びる。
燃え広がりが早い。どうやら、退く前に油を掛けたようだ。
「うぬぬ〜。これでは復元も出来ないのです!」
「構うものか、十分な戦果だ」
「そうですぞ陳宮殿。戦況はわが軍に大きく傾きました!」
「ん、音々えらい」
皆が口々に音々音を褒め称える。それもそのはず、退いていれば高確率で礫石の追撃を受けた。
たとえ免れたとしても、動けない者たちは助からず、その後の戦いでも陽軍を苦しめただろう。
「そうだ。早く皆の救出に――」
礫石を受けた地に振り向いて動きを止める。もうすでに陽軍の本隊が救出作業に移っていた。
寡兵で敵に突撃した理由を袁紹達はすぐに察知した。ならば、行動は早い方がいい。
陽軍本隊の誰もが、大炎が投石機を無効化することを疑わず。迅速に動けたのだ。
「おー、皆。さすがの活躍だったな」
「猪々子……」
「麗覇様の伝言だぜ。大炎は後方にて待機、治療にあたれってさ」
「だが」
「後は、任せな」
犬歯を覗かせる猪々子の姿に、皆が口を閉じる。
目が笑っていない。大炎に対する所業には彼女も腹が立っているのだ。
大剣を担ぎ、魏軍に向かっていくその背は、強い存在感を放っていた。
「いくぜ野郎ども! 倍返しだ!!」
『うおおおおぉぉぉぉぉ―――――――ッッ』
陽の二枚看板。十万の兵を連れ主攻として進軍開始。
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