第54話
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の長だ。この戦はもっぱら後方支援であって、前線での出番はない。
だからこそ彼女は、自分が全ての投石を指揮するものだと考えていた。
李典は現在、意識不明の重体で民に紛れ搬送されている。
副長が発射の手順を知る手段はなかった。
「――ッ、一台、礫石の装填を中断! 巨石に切り替えろ!」
礫石は無数の石を面で飛ばす。故に、再装填に時間がかかるのだ。
大炎の速度から、装填前に肉薄されるとした副長の判断は鋭い。
当たらなくてもいい。巨石で怯ませ礫石で討つ!
「……華雄、武器交換」
「?」
「いいから」
「説明ぐらいしろ、まったく」
言って、恋に自身の得物である金剛爆斧を渡す。
それから少しして、代わりに持っていろと言わんばかりに方天画戟が飛んできた。
危なげなく受け取れたとはいえ、扱いがぞんざいすぎる。後で説教だ。
「……」
恋は手に持った金剛爆斧にチラリと目を向けた。重い、そして熱い。
まるで華雄の想いが、熱となってこもっているようだ。
恋の方天画戟に、このような熱は無い。そもそも、戦場に対する想いすら持ち合わせていなかった。
戦うことは手段でしか無い。それも目的は、食い扶持を稼ぐ為だけである。
こんな時代だし、戦場に欠いたことはない。恋はただ求められるがまま敵を屠り続けてきた。
だが、そんな考えも袁紹を主としてから変化してきた。
彼は言った。自国のような発展と安定した暮らしを、大陸中に広めるのが夢だと。
小難しい話はわからない。初めて聞いた時も漠然としていた“夢”は、少しずつ、だが確実に実現に向かっている。
この地に至るまで、いくつもの地方を併合、陽国の領地としてきた。
どの場所も民は疲弊しきり、陽国はその地の再建に全力を注いだ。
食料や資材を安価で分け与え。生活が安定するまでの間、税を免除。
教育機関にも力を入れ、子供たちの未来を照らした。
恐怖や暴力ではなく、豊かさという名の温もりで包み込む。
いつしか、彼が作る未来を共に見たくなった。
「! 巨石が来ます!!」
「回避――いかん、間に合わん!?」
「大丈夫。このまま前進」
陽国と恋の夢は、実現への道を順調に歩んできている。
それを、たかが道端の小石程度で――
「――邪魔するな!」
『!?』
普段から物静かな恋らしからぬ声量。
それと共に放たれた戦斧の一撃は、眼前まで迫った巨石を砕いた。
『おおおおぉぉぉぉーーーッッ』
砕かれた巨石は無数の拳大くらいになって大炎に降り注いだが、勢いすら失ったソレでは傷一つつかない。
由一懸念さ
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