第54話
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事態は刻一刻と変化している。
魏軍による投石が成功し、陽軍が呆気に取られている間、渦中にいた大炎達の時も流れていた。
「……」
隊の長である恋は決断を迫られている。隊から僅かに先行していたことで、自分たちは投石を免れた。
数は三百弱、他の者達は礫石の濁流に呑まれてしまった。
撤退すべきだ。
再び投石が来れば、間違いなく全滅する。少しでも被害を抑える為に散会して撤退。
本隊に合流して体勢を整えるのが最善だろう。だが、撤退の令が出せないでいる。
理由は、地に倒れ伏す大炎達だ。
彼らは――生きている! 重装甲と恋が課してきた鍛錬が功をなしたのか、礫石の隙間からのぞく体に呼吸があることが確認できた。
陽軍屈指の武力と耐久力を持つ彼らだからこそ、咄嗟の投石を防御し、受け身をとることが出来たのだ。
だがら――撤退を決断できずにいる。
奇跡的に防げてもそれは初撃まで。落馬の衝撃も相まって重軽傷を負っている彼らは、その殆どが気を失っている。
恋達が撤退した後、誰が彼らを助けるのだ。
本隊か? 不可能だ。投石機の射程内に入ってくる敵軍を見逃すほど、魏軍は甘くない。
とはいえ、このまま手を拱いていても全滅の憂き目にあうだけだ。
自分達は兎も角、意識のない者は礫石の二撃目を耐えられないだろう。
恋の中で、彼らと過ごした日々が流れていく。
平時の鍛錬や食事、戦のあとに囲った鍋、酒盛りからの飲み比べ。
今までは音々音や家族達と、簡素ながらも楽しい食事をしてきた。いつのまにかソレは、騒がしく、賑やかなものに変化している。
恋は、孤独だった時間が長すぎた。
戦地において、鬼神の如く敵兵を屠り続けてきた彼女は、敵味方双方に恐れられてきた。
どれだけ言葉で誤魔化そうとも、常に一定の距離があった。
大炎の隊士達は、そんな恋を慕って集った。元々は優秀な武官の集まりだが、その実態は恋の武に憧れを抱いた武芸者の集まりだった。
やがで武だけでなく、その人となりにも惹かれ、隊士達は忠以上の親愛すら抱いている。そしてそれは、恋や音々も同様だ。
「!」
礫石に巻き込まれた大炎の中から、辛うじて動いている者たちが居た。
彼らは折れた槍を杖代わりに、何とか立ち上がろうとしている。
駄目だ、駄目だ、見捨てない、見捨てられない、彼らは――家族だ!
「しっかりしろ! 呂奉先!!」
恋の頬に鈍い痛みが走る。完全に意識外から放たれた拳に、反応できなかった。
拳の正体は言わずもがな、華雄だ。
「撤退の令を出せ、このままでは全滅する!」
「でも、皆が」
「この状況では最早、全ては救えぬ。判断を間違えるな!」
全
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