225部分:第十六話 深まっていく疑惑その十一
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第十六話 深まっていく疑惑その十一
「だから今日は無理なんだって」
「そうなんだ」
州脇は二人の言葉に少しがっかりとした顔で応えた。
「折角四人用の席なのにね」
「まあ仕方ないじゃない」
「そうよね」
結局二人の言葉に頷いた。
「それじゃあ今は」
「そうそう、三人で楽しもう」
「飲み放題なんだし」
「お酒じゃないけれどね」
それは残念だった。彼女達にとっては。
「制服で飲むのは流石にやばいからね」
「せめて私服だったらよかったけれど」
「まあそれは仕方ないとして」
「今はこれを楽しみましょう」
「そうよね」
州脇はまた二人の言葉に頷いた。そうしてだ。自分の目の前のチョコレートをたっぷりとかけたクレープを見てだ。こう言うのだった。
「ここ、スイーツも美味しいしね」
「甘さがわかってるわよね」
「アイスクリームだってね」
三人の前にはアイスも置かれていた。
「美味しいしね」
「そうよね」
「いいお店よね」
こんな話をしていた。そうしてだ。
不意にだ。橋口が二人に言ってきた。
「それでだけれど」
「それで?」
「それでって?」
「星華ちゃんの好きな人って誰かな」
この話をはじめたのである。
「それで。誰かな」
「ああ、あれね」
「あのことね」
州脇と野上もである。橋口のその言葉に応えて頷いた。
「どう見たって好きな相手いるしね」
「それもこの学校?」
「そうよね」
こう口々に話すのだった。
「それで相手だけれど」
「誰かしら」
「多分だけれど」
橋口はこう前置きしたうえでだ。そのうえで二人に話した。
「あの中学の頃から一緒だっている」
「三組のだっけ」
「あの剣道部の」
二人はすぐにこう言った。名前は中々出ない。
「ええと、あの青い長ランの?」
「誰だったかしら」
「確か」
野上がだ。首を捻りながら述べた。
「斉宮だったかしら」
「そうそう、そいつだったわ」
「あの何か線の細い」
陽太郎の顔と名前がだ。ここで三人の中で一致した。
「あいつなのね」
「星華ちゃんが好きなのって」
「成程ね」
橋口は頭の中で彼の顔と名前を一致させてだ。そのうえで言うのだった。
「星華ちゃんの好みってああいうんだ」
「悪くないんじゃ?」
「そうよね」
州脇と野上はその好みについてこう述べた。
「特にね」
「悪い奴でもないっぽいし」
「けれど中学の頃から好きみたいじゃない」
橋口は鋭くこのことを指摘した。
「それって凄くない?」
「言われてみたら」
「長いしね」
二人も橋口のその言葉に頷く。
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