第一章 護れなかった少年
第三十四話 Diablo
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の心を折り、敗北心とともに縛る。それしか考えられない。
そうじゃなきゃ、こんな面倒な手を使う理由なんて無い。生け捕りよりも殺す方が簡単だし、リスクも少ない。
「だから僕の切るカードはこの一枚だ」
息を吸って、吐く。僕はこれから僕じゃなくなる。いや、僕に戻る、と言った方がいいのか。詩音を殺した、蒼空という存在に。僕はこれから薄汚れた人殺しに戻る。もう二度と日の目を拝めなくなろうが、そんなことはどうでもいい。そんなことよりも、二人が生きて帰ることの方が重要だ。
だから、僕は全てを捨てて畜生に堕ちよう。二人を救うために。
「僕は......僕の身柄を引き渡す。僕は『笑う棺桶』に加入しよう。代わりに二人を解放してくれ、Poh。」
んんーッ!! という二人分のくぐもった叫び声が届くが、前言は撤回しない。ジッとPohを見つめる。さぁ、答えは如何に。
Pohは虚を突かれたように、数瞬の間、口をポカンと開いていた。
「今......。今、『笑う棺桶』に入る、と言ったのか......? その代わりに二人を解放しろと......?」
「ああ、そういった」
僕はPohをまっすぐ見つめ返しながらそう返す。
「テメッ!!」
「待、て」
刹那、ジョニーブラックが声を荒げるも、ザザに押さえられる。そんな事が行われても僕は視線をそらさず、Pohの方だけを見る。
と、Pohの口角が歪む。
最初は軽い含み笑いだった。だが、それは次第に大きくなっていき、最終的に狂笑となって耳朶を打つ。それは目的が成就し、勝ち誇るが故の笑いのようにも聞こえるし、又は、余りの怒りに我を忘れて、という笑いにも聞こえた。
そのままたっぷり数十秒ほど、狂ったように笑い続けると、Pohの笑いはピタッと止んだ。
「......ヤコブ、離してやれ」
その言葉に黙ったままヤコブを従い、僕の上から退いた。
ゆっくりと立ち上がる、背後は壁、前はゆっくりと歩いてくるPoh。もう逃げ場は何処にもないし、逃げる気すらない。
後悔はしない。この選択以外無いのだから。メイもケイも、血盟騎士団レベルには育っているし、あの二人ならこれからもやっていける。だから......だから......。
唯一、後悔があるとすれば――。
(――あの時、観覧車で言い淀んでいた言葉が聞きたかった)
だけど、これでいい。中途半端な思いを残すくらいならそんなのは、この先の修羅の道で邪魔以外に他ならない。僕にとっても、メイにとっても。だから、これでいいんだ。
迷いを断ち切るように、Pohを見る。そして、Pohの歩みは、僕の目の前で止まる。ここで、Pohの差し出した手を取り、僕は......。
Pohの身長は僕よりも
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