224部分:第十六話 深まっていく疑惑その十
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第十六話 深まっていく疑惑その十
「それで。何の競技に」
「私はまだ」
「決まっていないのか」
「はい、残念ですけれど」
そうだというのだった。
「それはまだ」
「そうか。決まっていないのか」
「一つは絶対に出ますけれど」
「そういう決まりだからな」
「それでもまだ何に出るかは」
やはり決まっていないという。月美自身の言葉も曖昧なものになっている。
「まだ」
「俺のクラスはもう大体決まってるんだけれどな」
「愛ちゃんが決めるんですね」
「ああ、そうなんだよ」
「やっぱりそうなんですね」
自分の予想が当たってだ。月美は今は微笑んだ。
「愛ちゃんが」
「椎名はやっぱり凄いよ」
陽太郎は素直に椎名を褒める言葉を口にした。
「何ていうかさ」
「何につけても深く考えてますよね」
「しかも的確だしな」
ここが重要なのだった。
「あいつが考えて決めて間違いはなかったからな」
「それずっとなんですよ」
「中学校の頃からか」
「はい、その時からなんです」
つまりその時から筋金入りの名軍師だったのである。
「愛ちゃんって頼りになって」
「だよなあ。あいつがクラス委員でよかったよ」
陽太郎の口調はしみじみとしたものになっていた。
「本当にさ」
「そこまでですか」
「そのお陰で今度の運動会うちのクラスいい結果になりそうだしな」
「愛ちゃんのお陰で」
「味方にしたらあれ程頼もしい存在はないさ」
しかしである。逆説も述べられた。
「ただしな」
「ただし?」
「敵だったら怖いな」
味方として頼もしければ敵になった場合は、である。当然そうなることだった。
「あいつはな」
「愛ちゃんって敵になったら怖いですか」
「そう思う」
またしみじみとした口調になっていた。
「とりあえず敵に回したくはないよ」
「私はそういうこと考えたことないですけれど」
「そりゃ親友だからだよ」
それでだと月美に話す。
「月美とあいつはさ」
「親友だからですか」
「椎名のこと好きだろ」
「はい」
陽太郎のその問いにすぐに答えた。
「大好きです」
「あいつも月美のこと好きだからな」
「だからですか」
「お互い親友同士で仲がよい状況だったら何も起きないさ」
今の陽太郎の言葉はしみじみとしたものであった。
「そういうことだよ」
「ずっと友達同士でいたいです」
月美は本音も述べていた。
「愛ちゃんとは」
「そうしたらいいさ。それで運動会はな」
「はい、運動会は」
「お互い頑張ろうな」
この言葉を結論にした。
「それじゃあな」
「はい、運動会はお互いに」
こんな話をして下校していた。しかしその現場をだ。州脇達三人が見てしまった。
三人はその時フ
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