03.過去語
ー水城涙ー
過去語ー水城涙ー 一
[2/3]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
。あの紙は確か―――指名手配書?
そんな奴に保護されたと言うのなら、逃げるのが今の最適な行動ではないのだろうか?
咄嗟に腰を浮かせて、子供達を集めるために声を出そうと、息を吸うが、「おっと、最後まで聞くんだ。」と言って、俺の肩に手を置く琴葉。先程まで机を挟んだ向こうにある椅子に座っていたはずなのに、音も立てずに此方に回ってくるのは不可能。時間があれば出来るだろうが、これは一瞬だった。
「私はね、白猫が嫌いなのだよ。あんな、黒猫を倒すためなら街の人々の事情も考えない奴らがね。君達が追い出された施設には、白猫の息が掛かっていた」だから何なのだ。それが本心だった。
此奴が白猫が嫌いだから人間を裏切ったと言うのなら、勝手にしろ、と言って終わりだった。俺にとって白猫が特別大切って訳では無いし―――まぁ、人の生活があるのは彼等の御陰なのだろうが―――別に俺にとっては如何でも良かった―――
「つまり、だ。君達がこうやって長い間、路地で生活していたのは白猫の所為って事にもなる」
が、此れを聞いてしまっては、勝手にしろ、では済まなくなった。
「は………?」
目を見開いて、狼狽える。其れを見て、薄く笑みを浮かべる琴葉。
若しかしたら嘘かも知れない、そう考えた。だが、まだ会って一時間余りしか経っていなくて、更に完全なる不審者であり、指名手配犯である琴葉の事何て信用は出来ない。目の前で微笑を浮かべる此奴の名前が、本当に黒華琴葉≠ナある事すら信用は出来ない。
人間の裏切者となれば尚更。
「最初は誰でも驚くものだ」ケラケラと乾いた笑いと共に、言葉を続ける琴葉。「まぁ、実際私は白猫と君達が居た孤児院が契約をしている所を見ている。白猫が、水城の息子を、彼奴が匿っている子供達と共に、院から追放しろ、さもなければ皆殺しにする≠ニ脅して居る所をね」
それでも、信じられない。信じてはいけない気がした。
此奴の言葉を信じれば、俺だって裏切者になる。そうすれば子供達も共に、裏切者となってしまうだろう。
暖房によって暖められた部屋が、段々冷たくなっていくのが分かる。絶対零度の様な視線が向けられ、部屋ごと凡てが凍り付くような気配がある。
「若し……」震える唇を動かす。「信じないと言ったら、アンタは俺達を如何する?」
「決まってるじゃない」琴葉は、視線はそのまま、口角を吊り上げ、不気味な笑みを浮かべる。「其処の窓から突き落として、永遠にさようなら(グッド・バイ)」
窓の外に映る、漆黒の高層ビル。純白の雪も、此の漆黒を染めつくす事は出来ていなかった。
リーン、ゴーン。遠くで鐘が鳴る音と、子供達のはしゃぐ声だけが、此の空間を飾る。
―――選択肢は無かった。
「信じる。アンタの事」
待ってました、と言わんばかりの表情を浮かべ、うふふと奇妙な笑
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ