暁 〜小説投稿サイト〜
繰リ返ス世界デ最高ノ結末ヲ
03.過去語
ー水城涙ー
過去語ー水城涙ー 一
[1/3]

[8]前話 前書き [1] 最後 [2]次話
 遠くで鐘が鳴った。
 俺達は琴葉≠ニ名乗る不審者(?)に着いて行き、現在彼奴の家に居る。
 部屋の中は黒と白の二色に統一されていて、此の部屋にはそれ以外の色が見つからなかった。花瓶に入れて飾ってある花も白。床に敷いた絨毯も白。だけどその下の床は黒。机も黒。置かれている物は机と椅子、ソファ、花瓶、電視機(テレビ)位で、とても物が少なくて、開放感がある。
 窓の外には広く街の景色が映っている。とても綺麗だった。
 だが、此処は基本的に入る事の禁止されている区域。此処は、俺達人間の敵である鬼≠ェ住む場所であるらしいのだ。実際鬼を見た事が無い為、此処に鬼が住んでいるという所では無く、まず鬼の存在から信じていないが。
 で、問題なのは何故彼奴がこの立ち入り危険区域に住んでいるのかだ。
 此の区域に間違えて入るという事は先ずありえない。普通の街は、植物や建物の色で綺麗に彩られている。が、この区域内の街は全ての物が黒いのだ。建築物も、植物も、凡てが黒い。だから、例え道を間違っていても―――自分の家への道を間違える奴は余り居ないとは思うが―――此の区域には入らないだろう。
「おい、本当に此処なのか?」俺は彼奴に問う。
「え、逆に此処じゃなかったら何処なん?」不思議そうに此方を見る琴葉。
まぁ、確かに自分の家を間違える程の阿呆は居ないか。
琴葉は、俺をソファに座るように促し、自分は椅子に深く腰を掛ける。子供達は既に琴葉の家の捜索―――と言っても、探検ごっこ的なものを始めていて、もう話を聞きそうにない。
ソファは光沢のある白い革で作られていて、座るのに躊躇いが在った。着ている服がとても汚れている為、このまま座ったら必ず汚してしまう。相手が不審者だとしても、一人の人間としてそういう気遣いがある。
「嗚呼、別に汚しても構わないよ」
 俺の心を読み取ったかのように、淡々と言葉を零す琴葉。「お言葉に甘えて……」と小さく呟いてから、俺はそのソファに腰を掛ける。
「君が今疑問に思っている事を中てよう。そうだね……一つは、何故こんな処に住んでいるのか。もう一つは、私が何なのか。でしょう?」
凡てを見透かすような黒い瞳。吸い込まれそうな程深い黒は、俺の中身を掻き乱している様で、君が悪い。
「嗚呼」小さく答えを返す。
「矢張りね」自慢げに話す琴葉。
「いいよ、君の疑問に答えてあげよう」足を組み替えて、妖美に微笑む琴葉。
「説明がしやすいように、二つ目の疑問から答えよう。私は黒華琴葉、人間の子供だ。まぁ、普通の子供では無いけどね」
「どういう事だ?」身を乗り出して問う。
「私はね、人間だが、鬼共の味方だ。その意味が分かるかい?」
 裏切者。そんな言葉が脳裏に浮かんだ。
 そう言えば、街で彷徨っていた時、張り紙に琴葉の顔写真が載っていた様な気がする
[8]前話 前書き [1] 最後 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ