221部分:第十六話 深まっていく疑惑その七
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第十六話 深まっていく疑惑その七
「適材適所を徹底させたから」
「そうか。けれど他のクラスもだろ」
陽太郎は自分達のクラスだけではないと言った。運動会は学校全体で行われるものだ。そうなれば他のクラスのことを考えるのも当然だった。
「それはな」
「その通り。けれど」
「けれどか」
「他のクラスのことも調べておいたから」
蕎麦をすする陽太郎にこう告げた。
「安心していい」
「他のクラスもかよ」
「敵を知り己を知れば」
孫子の言葉も出て来た。
「百戦危うからず」
「何か凄い話になってきたな」
「他のクラスは全部調べてそのうえで誰が何処に出てもらうか考えたから」
「そこまでか」
「大体全部勝てるようにしたから」
「全部か」
「普通こうした場合は二勝一敗を考えるけれど」
これも孫子である。ただしその子孫の話だ。
「勝てるように考えたから」
「じゃあ安心していいのか」
「かなりのアクシデントがない限り」
大丈夫だというのだ。
「安心して」
「凄い軍師だな」
「参謀でもいい」
「椎名だけは敵に回したくないよ」
陽太郎の偽らざる本音である。
「今そう思ったよ」
「私誰かに対して攻撃することない」
「いや、それでもな」
「敵に回したくない」
「本気で思ったよ。そこまで頭が回る相手なんだな。しかもな」
「しかも?」
「格闘技もやってるんだよな」
椎名はただ頭脳だけではないのだ。腕も立つのだ。
「キックボクシングか空手か。蹴り得意だったよな」
「うん」
「やっぱり敵に回したくないよ」
あらためてこう言うのだった。
「いや、本当にな」
「敵に回すとかじゃないんじゃ」
「それでも本当にそう思うよ」
こう言って憚らない。しかしその言葉の間にも食べている。今度は玉子丼を食べている。玉子とつゆが飯によく合って非常に美味である。
「お手柔らかにな」
「基本的に」
「基本的にかよ」
「つきぴーを泣かしたら許さない」
ここで月美の名前が出て来た。
「それは絶対に」
「それだけはか」
「つきぴーは友達だから」
だからだというのである。
「その時は覚悟していて」
「ああ、わかってるさ」
陽太郎も真剣な面持ちで言葉を返す。
「それはな。絶対にな」
「ならいいけれど」
「むしろ守らないといけないよな」
男の考えだった。それも恋をする。
「やっぱりな」
「そう、守って」
椎名の言葉に僅かだが願いが篭った。
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