第53話
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「着弾確認、成功です」
『オオオオオォォーーーッッ!』
場所変わって魏軍。兵たちは郭嘉の報告で沸いた。
「フフフ。今頃、陽軍は目を白黒させていでしょうね。何故、“それ”があるのか――と」
「はい、思考が停止している内に次弾装填を急ぎます」
それとは即ち投石機であった。それが二台。魏軍が保有する投石機は三台ではない、五台だ。
この事は魏軍内でも曹操と郭嘉、李典とその直属である工作隊しか知らない。
官渡に隠し、運び出したのではない。投石機は予め、この場に畳まれ置かれていたのだ。
全ては大炎を殲滅するための策。白馬一帯の攻防も、民を連れ立っての撤退も、大炎を誘き出す為の罠だった。
大炎が居た場所を巻き上げられた砂塵が舞う。轟音と共に巻き上げられたのだ。
巨石ではない。今回使ったのは礫石――人の頭ほどの大きさで角ばっている石だ。それが無数に、大炎を中心に広範囲に亘って降り注いだ。
巨石が点だとすれば、礫石は面。散弾である。李典が作り上げた投石機は、二種の投石が可能だった。
これを白馬で使えば、一帯を難攻不落の要塞と化すことは簡単だったが、それは悪手であると曹操、郭嘉の両名は看破していた。
投石機五台で礫石と巨石。大橋の大炎だけでは無く、渡河してきた陽軍すら蹴散らせただろう。
だが駄目なのだ。それでは袁紹が“興奮”から覚める。
袁紹も曹操同様、相手軍の力を欲している。正面から力を示すことで屈服させてくる。
決戦のち勝利を熱望する彼だが、兵の被害が割に合わないのでは話が変わってくる。
己が願望の為に、無駄な命を使うほど愚かな事はない。
要塞化した白馬攻防での戦果が、自軍の等価と合わないのであれば、彼は必ず戦い方を変えてくる。
つまり――白馬を迂回しての侵攻だ。
本国に陽の侵攻を耐えきれるほどの兵は居ない。魏軍は白馬を放棄して追撃せざるを得なくなる。
それを確認した陽軍は反転、魏軍の備えがない平地での戦に持ち込むのだろう。
故に、絶妙な力加減を演出してきた。投石機を隠し、礫石を封じてまで。
策は概ね成功、白馬の攻防に持ち込むことができた。予想外なのは華雄の存在だ。
郭嘉の予定では、白馬で数日攻防戦を広げる事になっていた。投石機を絡ませ、陽軍の戦力を少しでも削るはずだったのだ。
それがまさか、初日で、悪天候のなか夜襲を仕掛けてくるとは……。
だが盤面に狂いはない。予定が少し早まっただけだ。
そしてついにやり遂げた。あらゆる策、軍、戦術を蹴散らしうる大炎の――
「!? 投石を免れた者達が!」
「……少し狙いが逸れたようですね。問題ありません、次弾で終わりです」
晴れた砂塵の中から騎乗した大炎が
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