216部分:第十六話 深まっていく疑惑その二
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第十六話 深まっていく疑惑その二
「それでいけばいいじゃない」
「できる筈ないじゃない」
星華は妹のその提案に眉を顰めさせて返した。
「そんなおっかないこと」
「やれやれ、相変わらず度胸はないのね」
「悪い?」
「お姉は胸もなければ度胸もない」
眉を顰めさせる姉を少しからかっての言葉だ。
「そんなのだから駄目なのよ」
「駄目って」
「だから。告白すればいいじゃない」
この提案は変わらなかった。
「それならね」
「告白、なの」
「そう、告白」
星子の提案はあくまでそこに決まっていた。揺らぐこともなかった。
「すればいいじゃない、これは本当にね」
「彼女がいるかどうかもわかるから」
「いても奪い取る気迫で」
この言葉も変わらない。
「わかったわね。告白すればいいじゃない」
「勇気を出してなの」
「そういうこと。やってみたら?」
「けれど」
「けれどもそれもなくてね」
さらにけしかける調子になっていた。
「本当によ。告白しないと何もはじまらないわよ」
「告白かあ」
「まあお姉は度胸ないから」
またからかう調子だった。少し笑いながら自分の苺を食べて姉に言う。
「無理かしらね、それは」
「じゃああんたはできるの?」
「うっ、それは」
「できないでしょ」
星華はむっとした顔で妹に言った。
「やっぱり」
「まあ難しいけれどね」
「ほら見なさい、そうじゃない」
「何ていうか。勇気がいるから」
「そうでしょ。勇気がいるのよ」
立場が逆転していた。
「告白って」
「それでもよ」
「それでも?」
「お姉もいい加減勇気を出したら?」
あらためて姉を見ての言葉だ。
「そうやって何年もいたし」
「あくまでそう言うのね」
「言うわよ。それがお姉の為だし」
「ううん、けれど」
「けれどもそれでもでなくてよ。私だって勇気ないけれど」
自分のことも話す。そのうえでだった。
「当たったらいいじゃない」
「それで道が開けるっていうのね」
「そういうこと。私はそう思うけれどね」
「どうしてもね」
しかしであった。星華の表情はどうしても晴れないものだった。何時しか苺を食べる手を止めてだ。そうしてそのうえで妹に言葉を返す。
「できないから」
「仕方ないわね。けれどそれじゃあね」
「前に進まないっていうのね」
「そういうこと」
まさにそうだというのだった。
「それでもいいの?」
「それは」
「よくないでしょ」
あらためての言葉だった。
「やっぱり」
「どうすればいいのかしらって思ったりもするし」
「困ったお姉ね、全く」
「困ったってのは何よ」
「だから。度胸がないからよ」
どうしても言い出せない姉のことをまた言う妹だった。
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