第七章
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船長は遂に出会ったモビィーディッグを倒しに向かう、例え自分とこの船がどうなろうとも。そう思っていた。
それで彼等も覚悟を決めた、そして船長もだった。
そのつもりだった、だが。
彼はいよいよモビィーディッグを倒しに行こうと銛を手に小舟を出してそこに乗り込もうとした。しかし。
ここでリンダの顔がまた思い浮かんだ、それでだった。
モビィーディッグを目の前にしても彼女のことがどうしても気になってだ、勧めなくなった。それでだった。
船員達の方を振り向きこう言った。
「油はもう充分だな」
「はい、満杯です」
「もうこれ以上は詰めません」
「そんな状況です」
「わかった、ではだ」
船長は鯨油のことを確認してからあらためて言った。
「戻るぞ」
「アメリカにですか」
「港に」
「そうするぞ」
こう言うのだった。
「いいな」
「あの、モビィーディッグは」
「あの鯨はいいんですか?」
「遂に出てきましたが」
「あの鯨を倒さないんですか」
「船長は」
「いい、気が変わった」
だからだというのだ。
「それに御前達も巻き添えにするしな」
「だからですか」
「モビィーディッグはいいですか」
「もう」
「そうだ、いい」
実際にというのだ。
「だからだ、いいな」
「これからアメリカに戻りますか」
「油を持って」
「そうしていきますか」
「そうする、まずは途中ハワイに寄ってだ」
アメリカ本土から見て中継地であるこの国の港に寄ってというのだ。
「そしてだ」
「アメリカに戻りますか」
「そうしますか」
「そうだ、取り舵だ」
モビィーディッグが顔を向けていない方だった、そちらは。
「そこからだ」
「反転ですね」
「まずはハワイに向かって」
「そうして帰るんですね」
「そうするぞ」
こう言ってだ、そしてだった。
船長は船をハワイに戻させた、モビィーディッグは彼等の船を追わなかった。そしてだった。
船長はハワイに寄った時にそこで売っている派手な貝殻等を買った、そのうえでアメリカまで台風に遭いながらも戻り。
そしてだ、リンダのところに行ってだった。
貝殻を渡した、そうして彼女に言った。
「ハワイで買ってきた」
「ハワイで」
「そうだ、どうだ」
「とても奇麗です」
その貝殻を見てだ、リンダは船長に答えた。
「こんなものを貰えるなんて」
「嬉しいのか」
「船長からのプレゼントですし」
「そうか、それならな」
船長はリンダの言葉を聞いてまた言った。
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