第三章
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「その私にそなたの罪は勝るのか」
「それはわからないがだ、しかしだ」
「しかし。何だ」
「私はその大罪を犯したと言う貴殿を仇として殺す」
「仇としてか」
「そうだ、父アガメムノンのな」
その立場として、というのだ。
「仇としてだ」
「私を討つのか」
「そうする、貴殿を仇として殺すのだ」
「罪人としてでなくか」
「母上を惑わし父上を殺し国を奪ったのは罪だ」
こうしたことはというのだ。
「確かにな、しかしそれ以上にだ」
「私を仇としてか」
「私は貴殿を討つ」
「そうか、私は母上から授かった剣を父上とお会いした時に見せて己の生まれを知った」
このことから話すアイギストスだった。
「それと同時に己の全てが汚らわしく忌まわしい罪で穢れきっていると確信したが」
「そして悪を為していったか」
「生まれついての悪人だと思ってな、そして叔父上を殺してからだ」
「誰からも悪人と思われてか」
「それを確かだと思っていたがな」
「それは私にはどうでもいいことだ」
オレストは今も剣を手にしている、そして二人の周りには誰もいない。誰もオレストの仇討ちを止めようともアイギストスを助けようともしない。
「貴殿のそうした罪はな」
「ただ仇としてか」
「貴殿を討つだけだ」
「そうか、私は仇か」
アイギストスはオレストの言葉を聞いて述べた。
「只の」
「それがどうかしたのか」
「私を悪人、罪人だと言わないのはそなたがはじめてだ」
「そうだったのか」
「忌まわしい産まれで実の叔父を殺した私をな」
「貴殿にとってそれが全てなのだな」
「まさにな。しかし罪人として死ぬではなくな」
アイギストスは玉座から動かない、そのうえで言っていく。
「仇として死ぬのか、ならいい」
「いいのか」
「悪人、罪人と思われず言われないのははじめてだ」
自分自身でもというのだ。
「それならいい、ではだ」
「これよりだな」
「私を仇として討て、いいな」
「そうさせてもらう」
オレストも応えた、そうしてだった。
足を前に踏み出しアイギストスの心臓をその剣で貫いた。こうしてだった。
アイギストスを父の仇として討った、そのうえでミュケナイの者達を呼び父の仇を討ったことを宣言した。
「私は父上の無念を晴らした」
「はい、確かに」
「そうされましたね」
「そうしただけのことだ」
こう言った、だが。
アイギストスを悪人、罪人とは呼ばなかった。それで今もこう言うのだった。
「仇達の亡骸を葬ろう」
「はい、それでは」
「その様に」
ミュケナイの者達も応えた、そしてだった。
アイギストスは仇として葬られた、ミュケナイの者達は葬られる彼のその死に顔を見て不思議に思った。
「殺されたというのに妙だな」
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