閑話 それぞれ1
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」
「少しだけ」
「変わったな、キルヒアイス」
「そうでしょうか」
「今までは俺がどのような顔をしてようが、気にもしなかっただろ」
子供っぽさをだして、唇を尖らせる。
どのような顔をしても、その美しい顔立ちが崩れることはなかったが。
変わったのだろうかと、キルヒアイスは自問自答する。
確かにラインハルトが言ったように、今まではラインハルトの表情を気にすることはなかった。
いつも彼の主君は、自信にあふれ、滅多なことで表情を変えることはなかった。
それがあるのはキルヒアイスと、彼の姉であるアンネローゼの前だけだろう。
だが、それも一瞬のこと。
すぐにラインハルトは表情を戻し、何かを考えるように思考にふけることが多かった。
それは彼の進む道とその困難さを理解しているからこそ、何も言えなかった。
いや、完璧であることが当然と思いたかったのかもしれない。
だが。
あの戦いで、ラインハルトは様々な顔をキルヒアイスに見せた。
その揺れ動く表情を見て、ラインハルトがただ完璧なだけではないと理解した。
そして、その姿を多く見たいと思うようになった。
「そうかもしれませんが、私は常にあなたの傍におります」
「当然のことだ」
いつも通りのやり取りだが、どこか照れたような口調である気もする。
だが、すぐに表情を引き締めると、ラインハルトは背後を見た。
すでに高速となった艦からは、イゼルローンが豆粒のように小さくなっている。
「それに、奴とはすぐに会えるさ。ここが墓標である限り、必ずな」
「次は負けません」
「それも、当然のことだな」
ラインハルトが挑戦的に口にして、二人は小さく笑いあった。
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