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銀河英雄伝説〜生まれ変わりのアレス〜
閑話 それぞれ1
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「任せたよ、フォーク中尉」
「はい。では、失礼いたします」
 敬礼を再度行い、フォークは踵を返した。
 書類を持つ手に力がこもる。

 まったく、相変わらず厄介じゃないか、アレス・マクワイルド。
 表情を隠しながら、フォークは奥歯を噛み締めた。

 + + +

 ラインハルト・フォン・ミューゼル中尉。

 イゼルローン要塞。
 直径60キロメートル。人口にして数百万――2万隻の艦艇が収納可能である軍港には、常時1万3千以上もの駐留艦隊が接舷している。表面は液体金属が用いられた対レーザー兵器用の防御を施されており、その特性から常に形を変える姿は波立つようで海とも呼ばれる所以である。
 人類の発祥と呼ばれる地球は、外から見れば青一色であったといわれている。
 黒色金属質を持った液体がうねるように動く姿に、ラインハルト・フォン・ミューゼルはまるでヘルヘイムのようだと感じた。

 あるいは墓標か。
 そもそもこのイゼルローン回廊という存在が壮大な墓地のようなものである。
 自由惑星同盟あるいは銀河帝国の双方で、百年以上の長きにわたり死者を出している。
 だが、それでもなおここにこだわるというのは、仕方がない一面もある。
 現在の標準艦艇が進める距離は時速5500万キロメートル。
およそ光速の約半分の速度だ。

 だが、それでは宇宙はあまりにも広すぎた。
 艦船がただ単純に移動するだけでは、一生をかけても首都オーディンからイゼルローンまでたどり着くことはできないだろう。自由惑星同盟の首都ハイネセンなど不可能だ。
 そこで生まれたのがワープ技術。
 ある一定の距離を、まさに無視するがごとく一瞬で移動ができる。

 だが。
 それには決して問題があるわけではなかった。
 むしろ問題がなければ、おそらく自由惑星同盟は一瞬にして消滅している。
 惑星ハイネセンの上空に銀河帝国の艦隊が一瞬で移動できれば、いかにリン・パオが優秀であったところで、お手上げであっただろう。
 第一に、距離の問題だ。

 ワープを行うには、その質量と距離に応じて必要とされるエネルギーがある。
 むろん、それは通常で移動するよりも遥かに少ないが、エネルギーにも限界というものがある。
 二つ目が、環境だ。
 ワープホールを作り出す――つまり空間を歪めるためには、周辺の安定性が求められる。
 意図的に空間を歪め始めたところに、外的な要因が加われば、運が良ければ失敗――悪ければ、そのまま永久に亜空間をさまよい続けることになる。

 そして、銀河帝国と自由惑星同盟の間に広がる空間が、まさに分厚い壁となって妨げている。
 一足飛びに跳躍するには距離が大きすぎる。
 かといって、間を挟もうにも、環境が悪すぎ、再度ワープをすること
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