巻ノ百四十二 幸村の首その十一
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「だからな」
「何か不慮のことが起こり」
「右大臣様をお助出来ぬ」
「そのこともですな」
「兄上がお考えですな」
「その時どうなるかじゃが」
「修理殿、そのことですが」
これまで軍議の末席にいなくなった幸村の代理としていた大助がここではじめて言葉を出してきた。
「おそらくですが」
「お父上がか」
「何かお考えですので」
「だからか」
「はい、父上はおそらく」
秀頼の前では何を言い出すかわからない茶々がいるのであえて言わなかった、そこは大助もわかっていたのだ。
「生きておられて」
「そしてか」
「必ずです」
「奇策を用意されていてか」
「右大臣様を助けて下さいます」
大助は大野に述べた。
「何があろうとも」
「そうか、その為にか」
「はい、父上はその為にです」
「今は身を隠してか」
そのうえでというのだ。
「動いておられるか」
「そうかと、ですが」
「今はか」
「はい、何処かにておられ」
「この城にはおられぬか」
「しかし父上は生きておられまする」
このことは大助は確信していた、そのうえで大野に言うのだ。
「ですから」
「わかった、ではな」
「はい、いざという時は」
大野が言う思わぬことが起こって秀頼が窮地に陥ってもというのだ。
「ご安心下され」
「その言葉疑うことはしない」
大野は大助に確かな声で答えた。
「真田殿は決して嘘を言われぬ、そしてそのご子息である貴殿も」
「信じて頂けますか」
「その目を見ればわかる」
大助の目をというのだ、見れば一点の曇りもなく澄んでおりそのうえ何よりも強い光を放っていた。まだ元服したてだが確かな者の目だった。
「貴殿もまた嘘を言わぬことを」
「有り難きお言葉」
「有り難くはない、真実を言ったまでのこと」
それに過ぎないというのだ。
「だからな」
「礼にはですか」
「及ばぬ、そして十勇士もか」
「今は控えていますが」
全員城に戻って来た、そのうえで大坂城の一室にいてそこで明日の戦に備え今は休んでいるのだ。
「しかし」
「それでもじゃな」
「はい、その時が来れば」
「必ずじゃな」
「右大臣様をお助する為に父上と共に」
「働いてくれるか」
「そうしてくれます、及ばずながらそれがしも」
大助は自らもと言った。
「その為にも」
「わかった、では頼む」
「それでは」
「右大臣様のお命、真田殿もおられるなら」
大野は確かな顔になり述べた。
「明日は安心してな」
「戦いますか」
「そうする」
治房に再び答えた。
「豊臣の最期の戦を見せてやろうぞ」
「そして時が来ればですな」
「うむ」
それぞれ散って想いや役目を果たせとだ、大野は行間にこの言葉を入れて諸将に述べた。そうして
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