第5章:幽世と魔導師
第164話「憑依」
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=優輝side=
「椿……葵……?」
絶句して、何とか絞り出したのは二人の名前だけだった。
「……なんて声、出してるのよ……優輝」
「っ……その傷は……」
絶句したのは、二人の状態を見たからだった。
椿は足元に血だまりが出来る程出血しており、肩や腕、脇腹、足など、そこら中に斬られたり食いちぎられたような跡があった。
葵に至っては、既に死んでいるはずの酷さの傷を負っている。
あの時、僕の偽物にボロボロにされた時よりもさらに酷い……死んでいてもおかしくはない、いや、生きているのがおかしい程の傷だった。
「……まさか、僕をずっと守るために……」
「……瘴気で妖が大量に湧き続ける。当然、アースラと通信が繋げられる訳もない。……そんな状況だと、せっかくの八将覚醒も形無しね……」
「………」
椿の恰好と、そこから感じられる雰囲気は変わっていた。
今言った“八将覚醒”をしたからなのだろう。
だけど、今ではその覚醒が見る影もない程、生命力が弱っている。
これでは、神降しを再びする事など不可能だろう。
「っ、今すぐ治療を……!」
「ダメよ」
「な、なんで……」
……いや、冷静になって考えればわかる。
もう、“手遅れ”なのだ。
葵がずっと黙ったままなのもそれが理由だろう。
喋る程の生命力が、もうないのだろう。
「……悪路王が言っていたのは、こうなる事を予想していたのかもね……。まったく……」
「椿……この、術式は……」
「以前、知識として教えていたでしょう?“憑依”、よ」
椿と葵、そして僕の下に陣が張り巡らせられていた。
その術式は、見たことがないものだった。
でも、椿の言う通り知識としてなら知っているものでもあった。
「憑依……式姫が憑りつく事によって、能力値の強化をする……」
「ええ。……私たちの力、貴方に託すわ」
確かに、神降しができないのならそうするしかないだろう。
未だに守護者の気配は消えていない。戦うためには少しでも戦力強化をするべきだ。
……だけど、それは……。
「憑依する側は、どうなるんだ?」
「普通なら憑依を解けば無事に戻ってくるわ。……優輝が聞きたいのは、そうじゃないわよね?」
「っ、当たり前だ……!」
普通の憑依はどちらも安全な場所で行っていると聞いた。
……つまり、万全の態勢で行うべきなんだ。
「……瀕死の……死にかけの状態なら、どうなるんだ……?」
「………わからない、わ……」
……まぁ、前例がないのだから、仕方ないだろう。
でも、椿の返答を聞いて、わかった。……わ
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