203部分:第十五話 抱いた疑惑その七
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第十五話 抱いた疑惑その七
「そんなものか」
「そうだよ、何せ幼稚園の頃からずっと一緒なんだぜ」
「もうね」
「キスとかはないか」
「何だそりゃ」
「食べられるの?」
返答はこんなものだった。
「そんなのねえよ」
「私達の間にはね」
こう答えが返ってきた。
「何かいつも一緒にいるとな」
「そうしたこともないっていうかね」
「っていうかそれって」
赤瀬がここで横から言ってきた。
「倦怠期の夫婦なんだけれど」
「おい、まだ十六でかよ」
「倦怠期って」
二人も流石にこの指摘にはあまり面白い顔をしない。
「俺達ってそんなのか?」
「そこまであれになってる?」
「話を聞く限りはね」
そうだと答える赤瀬だった。
「そう聞こえるよ」
「うっ、そりゃまずいな」
「何とかしないと」
こう言われるとだった。流石に二人も危惧を覚えて顔色を変える。しかしであった。
「とはいってもなあ」
「そうよね」
すぐに話の調子を変えるのであった。
「別に何もな」
「これからどうしようってこともないし」
「そういうのが駄目なんじゃないのか?」
陽太郎もここで二人に言った。
「やっぱりな。何かこう付き合ってるとか好き同士っていうかな」
「いや、俺好きじゃないし」
「私もよ」
言われるとすぐに否定する二人だった。
「こんな奴よ」
「特にはね」
「そう言い合うのが駄目なんじゃないかな」
すぐに赤瀬の突込みが来た。
「やっぱりね」
「俺もそう思う」
陽太郎は赤瀬の言葉に同調した。
「そんなのじゃやっぱりな」
「おい、何だよ斉宮よ」
「何でもわかってるって口調じゃない」
二人はその陽太郎に即座に抗議してきた。
「何かあったのかよ」
「そうよ、西堀さんも」
「少なくとも御前等よりはだと思うけれどな」
あえて何があったかは言わなかった。
「っていうか御前等もうそのままでいいんじゃないか?」
「いいって?」
「それってどういうこと?」
「何かすっごい自然だからな」
だからだというのである。
「もうそのままでな」
「つまり夫婦みたいだってか」
「その倦怠期の」
「そう、だからだよ」
そのものずばりであった。
「そうでいいんじゃないのか?そのままで」
「そう言われると面白くないな」
「そうよね」
狭山も津島も今の言葉には嬉しくなさそうであった。
「何かよ、倦怠期を乗り越えるとかな」
「そういう智恵ってないの?」
「冒険」
突如として声が聞こえてきた。
「それがいい」
「ああ、それか」
「それなのね」
二人はその言葉に頷くのだった。
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