ある憲兵隊員の憂鬱
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次第です。ただそれを頭に入れておかれたほうが、今後の仕事は有意義なものになると思いますよ」
微笑すら浮かべるアレスに、コリンズはメモを書いてから、しばらく硬直する。
特大の爆弾だ。
同盟軍だけではなく、政治家まで関わっているとなると一大スキャンダルだ。
だが、それを確実に否定できない部分もあった。
仕事柄闇にはよくかかわっている。
そして思うのが、政治家の軍への関与の多さ。
だが、メモしたことを正しく報告書としてあげることには躊躇いがある。
報告書を見た憲兵隊司令官であるドーソンは一笑するだけだろう。
だが、実際に現場で関わっているとからこそわかる。
決して、アレス・マクワイルドが虚偽を話しているわけではないと。
「最も装甲車の改修は命に係わる問題です。現場としては、それこそ一秒でも早く治してもらいたい。予算だけが出ているのであればそうも思いますが、担当が士官学校を卒業したばかりの私一人、予算だけつけてあとは時間稼ぎをしたいのだと感じました。そう疑ったら契約書や書類を見て、それが確信になった。そんなところでいいでしょうか、報告としては」
「十分だ。むしろ聞かなかった方がよかったこともあった気がするよ」
「報告書をどうするかはお任せします。しかし」
思い出したように笑いをこらえる様子に、コリンズは嫌な予感を感じた。
汗を何度となく拭い、そして、迷う。
このまま聞かずに帰ったほうがいいのではないかと。
だが、憲兵隊員としての自負かあるいは好奇心か。
「まだ何かあるのか。できれば最後まで教えてもらいたい」
「いや、たいしたことではありませんよ。ただ契約書とかを確認していて思ったのが、不正の仕方が正直すぎて、見ていて笑っちゃいました」
「そ、そうかな。アーク社は実に巧妙にやっていたと思うがね」
「この時代はそうかもしれないですね。でも、私でしたら……」
続いて語ったアレスの不正の手口について、コリンズは記録を残すことすらやめた。
聞かなければよかったと思うのと同時。
どのような不正も見破ると思っていた自信は粉々に打ち砕かれ、この男は鬼の生まれ変わりだと、コリンズは確信を持った。
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