ある憲兵隊員の憂鬱
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に、強めに扉を叩く。
「いまいそがっ――」
否定の言葉を告げる前に、アレスは扉を開けた。
「失礼しました。声が聞こえなかったものですから。何かございましたか、課長」
素知らぬ顔で姿を見せれば、そこには顔を赤くするセレブレッゼと見知らぬ制服姿の青年がいた。よほど怒られたのだろう、角度を直角にしながら頭を下げて、顔だけがこちらに向いていた。
誠実そうな三十半ばくらいであろう人好きのさせる表情が、今は困ったように眉が下がっていた。
「マクワイルド中尉」
不機嫌そうに唸るセレブレッゼと助けを求めるような青年。
それを見て。
「お邪魔いたしました」
アレスは静かに扉を閉めた。
+ + +
「いやいやいや! そうじゃない、お邪魔じゃない」
慌てたような言葉が、扉から聞こえてくる。
騒がしい声が倍増した。
そのままにしてもよかったが、このままでは終わりそうにないため、アレスは諦めたように扉を開けた。
「マクワイルド中尉、入ってきなさい」
「失礼いたします」
敬礼をして、室内に入った。
頭を下げていたため気づかなかったが、室内にいた青年はアレスよりも頭一つ高かった。
最も筋肉質な体型ではなく、細身であり、手足が長く見える。
「君にも紹介しておこう。こちら、憲兵隊のコリンズ少佐」
「憲兵隊のフィル・コリンズだ。よろしく」
整えられたようなしっかりとした口調と態度は憲兵隊らしい姿だ。
最も先ほどの醜態がなければの話ではあるが。
「こちらの方がマクワイルド中尉とお話ししたいということだ」
「お時間をとらせるつもりはありません」
皮肉気なセレブレッゼの言葉に、コリンズの背筋が伸びる。
セレブレッゼを見れば、アレスは表情を変えず、コリンズを見た。
「ええ。聞きたいことがあるのでしたら、断る理由もありませんし」
「そう言っていただけると助かります。では、少し外の方に」
コリンズが言いかけて、セレブレッゼが指さしたのは課長室に付属している会議室だ。
「そこを使うといい」
「いえ、そこまでしていただくわけには」
「いいから使え」
不機嫌な声に、コリンズは慌てて敬礼。
「ええと、では、マクワイルド中尉。お願いする」
恐々とした声に、アレスは息を吐き、セレブレッゼを見る。
「課長。笑いがこらえきれなくなっていますから、笑うなら部屋に入った後にしてください」
「うるさい。そう思うなら、さっさといけ」
「え」
コリンズが固まり、セレブレッゼとアレスの顔を交互に見た。
そこで二人の顔に笑みが形作られていることに、コリンズは心底わからないといった表情で首をかしげるのだった
+ + +
室内の電灯をつけて、部屋に入れば、そ
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