ある憲兵隊員の憂鬱
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ゼのものだろう。
問題はと、装備企画課にいる面々が周囲の顔を伺う。
室内には見知った顔が並んでおり、退室しているものの姿はなかった。
どこかの誰かが、セレブレッゼの怒りを買ったらしい。
しかしながら、これほどまでにセレブレッゼが怒りを露わにするのは珍しい事だ。
最初の怒声から落ち着いてはいるが、いまだに怒り冷めやらぬ口調が装備企画課に聞こえてきている。ざわめきが再び戻り、しかし、話されることは一体何が起こったのだろうといった想像である。
怒りの矛先が自分たちではないことが理解できれば、そこに浮かぶのは興味。
思い思いに適当なことを言っている。
セレブレッゼの子供に隠し子ができたとか、飛躍すぎだろう。
だが、楽しめるのはあくまでも責任が少ない人間ばかりだ。
これからサインをもらいに行く予定の、あるいはそれでなくても、機嫌が悪いことに胃を痛くする人間もいる。
そんな一人であるウォーカーも、また胃を抑えながら何とかするべく動いた。
「マクワイルド中尉」
「えっと。何でしょう?」
書類から目を離して、アレスはウォーカーに視線をやった。
「に、睨まないでくれ。い、胃がさらに痛くなる」
「いえ、この顔はもともとですから。病院に行ったほうがいいのでは?」
「病院よりも、お願いしたいことがある。君にしかできない仕事だ。頼むから様子を見てきてくれないか」
「いや、むしろ上司のあなたの方が適任でしょう」
「無理だ。せっかく治った胃潰瘍が再発してしまう」
「お、お大事に」
ウォーカーの悲鳴交じりの即答に、アレスは慰めの言葉しか浮かばなかった。
少なくともウォーカーは無理だ。
と、周囲を見渡せば、上司全員がアレスの視線を避けた。
全員逃げたな。
中尉に全部投げるというのはどうかと思うが、かといって室内に入る声はいまだに怒りが収まらぬようだ。まくしたてる言葉の内容は不明であるが、ただ怒っていることは間違いない。
このままでは近いうちに、他課の野次馬が押し寄せてくるだろう。
それはそれで面倒なことになることは間違いがなく、アレスは小さくため息を吐くと、書類を置いて、立ち上がった。
「す、すまないな」
「まあ、謝るのは言ってみてからの状況次第で。厄介なことだったら、酒でも奢ってください」
「何杯でも任せておいてくれ」
そこだけは自信ありげな声に、アレスは小さく笑いながら、室内を後にした。
「大体貴様らはなんだ。自分たちでは知らなかった癖に、あとからきて我が物顔に。ハイエナでももう少し遠慮というものを見せる」
廊下を出れば、怒声が言葉となって扉から漏れ出ている。
反論を許さぬ強い口調に、相手からの返答は聞こえない。
それでもなお続ける言葉を遮るよう
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