201部分:第十五話 抱いた疑惑その五
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第十五話 抱いた疑惑その五
「このまま斉宮と一緒にいるだけでいい」
「一緒でなのね」
「そう、それだけで進んでいくから」
「よくわからないけれど」
「わからなくてもいい。後でわかる」
椎名はここでは深く言わなかった。
「だから」
「そうなの」
「そう、つきぴーとあいつが一緒にいるだけで」
「あいつ?」
あいつと聞くとだった。ふと星華が声をあげた。
「誰のことかしら」
「だからその馬鹿でしょ」
「あいつに騙されてるその馬鹿」
「そいつのことでしょ」
三人はここでも星華に対して話した。
「だから特に気にすることないじゃない」
「うちの学校の奴か他の学校の奴かはわからないけれどね」
「それでもね」
「そうね。気にすることはないわね」
星華もそれで頷いたのだった。
「別にね」
「そうそう、それだったらね」
「まあ今は聞いてるだけでいいじゃない」
「見ているだけでね」
「そうね。今はね」
星華もそれで頷いた。そうしてだった。
今は月美を嫌悪の目で見るだけだった。それで留まることができた。
そしてだ。月美と椎名の話は続いていた。
「このまま二人でね」
「デートね」
「そう、行き帰りの」
ここは星華達には聞こえなかった。
「今何て言ったの、あのチビっ子」
「ええと、何?」
「聞こえなかったけれど」
「ねえ」
四人はこれには戸惑ってしまった。
「あいつの喋り方って何か淡々としてるし」
「声も小さめだし」
「だからね」
「今は」
それでだった。聞こえなかったのだ。それが彼女達にとっては残念だった。
月美はだ。椎名のその言葉に頷いていた。
「じゃあ今はこのままデートしていればいいのね」
「それでも随分違うから」
「そういえば」
月美もここで頷いた。
「これまでとはそれだけで随分違うわね」
「そう、デートなんてしていなかった筈」
「ええ、確かに」
まさにその通りだった。
「そうよね。全然ね」
「そこが違うから。動いていないけれど進んでいる」
「だから今は動かなくていいのね」
「動く時になったら言うから」
椎名は静かな顔で話した。
「そしてあいつも後ろから押す」
「有り難う」
「何なら背中から蹴っ飛ばす」
ここで言葉は少し過激になった。
「そうするから」
「蹴っ飛ばすって」
「例え。ただし」
「ただし?」
「必要ならそうする」
目には感情がない。椎名のその無表情な顔そのままである。しかしそれでも本気であることは月美にはよくわかることだった。
「つきぴーにはそういうことしないけれど」
「何で彼だけなの?」
ここで陽太郎と言わなかったのは偶然だった。しかしそれでもそれがそのまま星華達から彼女自身を守ることに
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