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小夜の友達
第三章

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「自分がそう思っていても相手は違う場合もあるでしょ」
「そう言われると」
「人間自分の気持ちがわからない時もあるのに」
「相手の気持ちは」
「完全にわかる筈ないじゃない」
 だからだというのだ。
「自分のことを本当に友達と思っているのか」
「友達はそうしたものっていうの」
「どちらかがいなくなって」
「その時になの」
「相手がいなくなったことを悲しい、残念って思うなら」
 そうした感情を抱けばというのだ。
「その相手の人は自分にとって友達だったのよ」
「そうしたものなの」
「それで相手の人もわかるのよ」
「その人が自分をそう思ってくれている人、つまり友達って」
「そうよ、わかるんじゃないかしら」
「それが友達なの」
「そうも思うし、私は」
 小夜に明るい顔で話すのだった。
「別にね」
「友達を無理に好きになることはないの」
「他の誰もね」
「自分自身も」
「そうよ、というか本当に言うけれど」
 友人はコーヒーを飲みつつ小夜に話した。
「あんたが好きになった人がいなくなるとか」
「そのことはなの」
「絶対に只の偶然でしょ」
「そうかしら」
「あんたが邪神とかでもない限り」
「れっきとした人間だから」
「そんなに気になるのならお祓い行けばいいし」
 そうすればいいというのだ。
「本当にね」
「気にしなくていいの」
「そうよ、じゃああんたが好きなものがなくなったりした?お気に入りのアクセサリーとか」
「そうしたことは別に」
「じゃあたまたまよ、そうしたことは気にしないで」
 それでと言うのだった。
「やっていけばいいのよ」
「肩肘張らずに」
「それでね、じゃあね」
「それじゃあ」
「このお店ザッハトルテ美味しいのよね」
「アップルパイも」
「じゃあお互いに食べましょう、今からね」 
 小夜にこう言って自分がウェイターを呼んで注文した、それが終わってだった。
 小夜にだ、こう言ったのだった。
「別に私を嫌いなままでいいから」
「そうなの」
「ええ、それでこうしていましょう」
「わかったわ」
 小夜はこくりと頷いた、そうして彼女と共にいるのだった。
 後でわかったことだが小夜が気に入った相手が一月も経ずして失踪するのは偶然だった、引っ越したり夜逃げしたりだった。小夜にそんな力はなかった。だがその友人は結局嫌いなままだった。嫌いでも一緒にいたが。この関係はその友人が死ぬまで続き小夜は老齢になって彼女を友達だと思ったのは遥か先の話である。


小夜の友達   完


                   2018・6・26
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