第二章
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「アップルパイやシフォンケーキは好きじゃないから」
「そうなの」
「貴女は好きでもね」
それでもというのだ。
「ザッハトルテとかが好きで」
「そうなの」
「だからねそのことは安心してね」
「私のシフォンケーキやアップルパイは取らないの」
「絶対にね」
「ならいいけれど、ただ本当に私は貴女が嫌い」
何度もこう言う小夜だった。
「そのことは言っておくから」
「わかったわ、けれどね」
「私の友達でいるのね」
「そうさせてもらうわ」
こう言ってだ、そしてだった。
小夜はその友人と共にいた、この友人は彼女にとってたった一人の友人と言えた。だが小夜は彼女が嫌いだった。
それで一緒にいても彼女を好きではなかった、だが彼女はいつも小夜の傍にいた。それである日一緒に喫茶店にいる時彼女は小夜に言った。
「あんた前に話していたわね」
「何を」
「あんたが好きな人はいなくなるって」
「そのことね」
「ええ、言ってたわよね」
「私に見張られてる気がするとか」
「いなくなるとか」
また小夜に言ったのだった。
「そうだったわね」
「ええ、正直嫌な気分がするわ」
自分に何かあるのか、そう思うのだった。
「私も」
「たまたまでしょ、あんたに呪いがあるとかね」
「ないっていうのね」
「そんな呪いがあったら」
それこそというのだ。
「私はここにいないわよ」
「私貴女嫌いだから」
「そうよね、じゃあね」
「それなら」
「誰も好きにならなくていいのよ」
友人は笑って言った、コーヒーを飲みながら。
「そうしたらいいのよ」
「それでいいの」
「そう、いいのよ」
まさにというのだ。
「別にね」
「変なこと言うわね」
「友達は好きにならないとって思ってるわね」
「ええ」
その通りだとだ、小夜は答えた。
「友達はね」
「どうして失踪するかは私は知らないわ」
小夜が気に入ったその人がだ。
「このことはね、けれどね」
「それでもなの」
「別に肩肘張ってね」
「誰かを好きにならなくていい」
「そうよ、それでいいのよ」
「そんなものなの」
「若し何かの呪いとかでそうなるのだったら」
呪いは否定したがだ、若しあった場合も語るのだった。
「好きにならないでいいのよ」
「それでいいの」
「そう、別にね」
「そういうものなのね」
「そうよ、それで私が嫌いならね」
「嫌いでいいの」
「少なくとも私はそれでいいわ」
小夜が自分が嫌いでもというのだ。
「友達でいいわ」
「私が友達と思っていなくても」
「友達ってね、お互いが生きている時にわかる?」
ここでこうも言ったのだった、小夜に。
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