第一章
[2]次話
小夜の友達
小夜に気に入れられた者は一月も経ずに姿を消す、小夜はそんな気がしていた。
だがそれでも小夜は友達が欲しい、常にそう思っていた。
学校にいても家でもだった、だが彼女について知っている者は僅かでその存在を確認出来る者もそうだった。
しかしその小夜にも友人がいる、だがその友人にだ。
小夜はいつもだ、こう言っていた。
「私は貴女が嫌い」
「それはどうしてなの?」
「私と全然違うから」
小夜はその死んだ魚の様な血走った様な目で友人によく言っていた。
「だから」
「そうなの」
「ええ、嫌いよ」
小夜はまた言った。
「私は暗くて存在感がないのに」
「自分で言うわね、いつも」
「それなのに貴女は明るくて存在感があって」
「自分と全然違うから」
「そう、だから」
それ故にというのだ。
「私は貴女が嫌い」
その友人にいつも言っていた。
「だからあまり見たくない」
「それで自分から声もかけないのね」
「そう」
その通りという返事だった。
「そして見ない」
「そうなのね」
「それなのに」
けれどとだ、小夜は彼女に言うのだった。
「私はよく貴女と一緒にいるわね」
「私の方から声をかけてきてね」
「私に気付かない人も多いのに」
むしろ殆どの人がそうだ、とかく小夜は存在感がない。
「それでも気付いて」
「声をかけてきてね」
「私に自分から友達になろうって言って」
「ええ、今も一緒にいるわね」
「そのずけずけとした感じ嫌い」
「本当に私のこと嫌いなのね」
「ええ、何度も言うけれど」
その嫌いな訳をまた言う小夜だった。
「私と全然違うから」
「人には個性があるわよ」
「個性はそれぞれ」
「そう、だから別にいいでしょ」
「よくない。というか」
「というか」
「私はどうしてか」
ここでだ、小夜は友人に言った。
「貴女と一緒にいる」
「私から声をかけて」
「そうね、けれど」
「けれど?」
「私は断ることが出来るのに」
それでもとだ、小夜は言うのだった。
「断らない」
「ちなみに私断られてもね」
「私に声をかけるの」
「そのつもりよ」
「そうなの」
「そう、私には目指すものがあるのよ」
友人は小夜に笑顔で話した。
「一つね」
「何かしら」
「学校の誰とも友達になる」
「それで私ともなの」
「ええ、友達になるわ」
「そうなの、私は貴女が嫌いなのに」
「友達になるわ、ただね」
「ただ」
「私はね」
ここでだ、こうも言った小夜だった。
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