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夢幻水滸伝
第五十五話 武蔵と箱根でその九

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「いいわね」
「へえ、今からですね」
「攻めるわよ」
「急襲仕掛けやすな」
「そうよ、倒せるとは思えないけれど」
 それでもというのだ。
「仕掛けるわよ」
「ここで全然仕掛けないとね」 
 それこそというのだ。
「敵も油断しないからね」
「そうでやんすね」
「あたい達が最後に勝つ為にね」
 まさにというのだ。
「ここは勝てないとわかっていてもね」
「仕掛けるってことでやんすな」
「そうよ、それじゃあね」
「今からここに潜ませている五千の兵で」
「攻めるわよ」
 こう話してだ、二人は自分達が率いている兵達を歓声と共に出してだった。
 関西の軍勢の先陣に襲い掛かった、だが。
 井伏は冷静にだ、自分が率いる兵達に言った。
「鉄砲、そして槍で方陣を組んでじゃ」
「そうしてですね」
「守りますね」
「援軍が来るまで」
「そうしますね」
「そうじゃ、援軍が来たらその援軍もじゃ」
 彼等もというのだ。
「守るんじゃ」
「ここを守り抜く」
「そうしますね」
「ほなやってやりますか」
「ここは」
「そうや、ここで守り抜いてじゃ」 
 そしてというのだ。
「敵を退けるぞ」
「ここが正念場じゃ」
 山本も自分が率いる兵達に言う、その手には既に日本号がある。当然ながら毛利陣羽織も具足の上から羽織っている。
「守るんじゃ」
「そうしましょう」
「敵は多いですけど」
「守ってそうして」
「そして、ですな」
「援軍はどんどん来ますし」
「守り抜きますか」
「そうするんじゃ、鉄砲に槍でじゃ」
 それで方陣を組んでというのだ。
「敵の攻めを押し返すぞ」
「ええか、敵がどれだけ攻めてきてもじゃ」
 それでもとだ、井伏がまた話した。
「陣を屑さんことじゃ」
「方陣それぞれが連携し合って守るんじゃ」
 山本はこうも話した。
「ええのう」
「自分等の方陣が崩れそうになっても諦めたらいかんぞ」
「他の方陣で助けるんじゃ」
「勿論わし等も守り抜く」
「そうするからのう」
 是非にと言ってだ、そしてだった。
 二人は自分達が率いる三千の兵達を三百人ずつ合わせて十の方陣に組み槍を前に出させてその後ろに鉄砲を構えさせた。そうしてだった。
 東国の兵達への守りに入った、だがその彼等を見てもだ。
 武者小路は驚かずに兵達に話した。
「こんなのは想定してるでしょ」
「はい、もう」
「我々も」
「敵も馬鹿じゃないです」
「これ位はしてくると思ってました」
「それも普通に」
「そうね、ならこのままよ」
 武者小路は自身の神具である黒漆剣を出しつつ言った。
「方陣の一つ一つを集中攻撃していくわよ」
「守りに入ったら突き崩す」
 有島も兵達に言う。
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