196部分:第十四話 夏の終わりにその十四
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第十四話 夏の終わりにその十四
「皆あっちに行くから」
「砂浜ですか」
「そうなんだ。だからさ」
「また機会があればですね」
「うん、ここにさ」
こう月美に言うのである。
「来ような」
「わかりました。それなら」
「それじゃあ今日は帰るか」
「はい」
また陽太郎の言葉に頷いた。そして。
「駅まで」
「一緒に」
「そうですね。もうすぐ夏休みも終わりですけれど」
「早いよな」
陽太郎は今度は少しくすりと笑った。
「何かな。すぐだよな」
「そうですよね。あっという間でしたね」
「四十日以上もあるのにいつもすぐに終わるよな」
「今年は特にそうでしたね」
「ああ、本当にな」
月美のその言葉に夕陽の中で頷いた。その夕陽も深くなっていっている。
「あっという間だったよ」
「気付いたら今こうしていますし」
「短かったな。けれど」
陽太郎は言った。
「楽しかったよな」
「楽しかったですか」
「月美はどうなんだよ、そこ」
微笑んでだった。こう月美に問うたのである。
「この夏休み楽しくなかったか?」
「それは」
「月美とデートもできたし家にも行けたしな」
デートもだった。多くしてきた。陽太郎にとってはそれもいいことになっているのだ。
「それに今だって」
「今も。そうですね」
「こんないい夏休みなかったよ」
こう言うのだった。
「それで月美はどうなんだ?」
「私もです」
月美はまた述べた。
「私も。短くて」
「楽しかったんだな」
「はい、とても」
にこりと笑っていた。そのうえでの言葉だった。
「楽しかったです。今は特に」
「今は、か」
「はい、陽太郎君もですよね」
「うん、そうだよ」
その通りだと。陽太郎は微笑んで答えることができた。
「こんな楽しい思い出ってないよ」
「このままずっと一緒にいたい位です」
月美はこんなことも話した。
「ここにずっと」
「ははは、そうだよな」
陽太郎はここでも笑顔だった。
「ずっと一緒にな。いたいよな」
「時間が過ぎてしまうのが惜しいです」
「惜しいよな。けれどさ」
「けれど?」
「これからも一緒にいたらそうじゃないんじゃないかな」
陽太郎はだ。ここでこう言ったのだった。
「一緒にさ。いたらさ」
「一緒にですか」
「そう、一緒にさ」
これが今の陽太郎の言葉だった。
「惜しいって思う時間はないんじゃないかな」
「そうでしょうか」
「今と同じだけ。いやもっと楽しい時間を過ごせればさ」
そうではないかと。陽太郎は話した。
「そうじゃないかな」
「そうですか」
「だからさ。夏休みが終わっても」
暫く正面に向けていたその顔をだ。また月美に向けての言葉だった。
「一緒にいよ
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