第一幕その十一
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「羨むっていう感情よりも」
「何、謙虚って」
「知らないのね」
「そんな言葉聞いたことはあってもね」
それでもというのです。
「頭に入ってないわよ」
「耳にもなの」
「あたしの耳は猫の耳よ」
見ればしっかりと耳もあります。
「遠くの小さな音も聞けるけれど」
「それでもなのね」
「謙虚なんて言葉はね」
それこそというのです。
「耳に届いたことなんてないわよ」
「つまり想像どころかなのね」
「それ以前のものよ」
「そうなのね」
「というか今聞いたけれど」
その謙虚という言葉をです。
「もう忘れたから」
「頭に入らなかったからなのね」
「そうよ、それだけあたしとは縁がないということね」
頭に入らないまでにです。
「所詮はね」
「そこで所詮っていうのがね」
「あたしらしい?」
「そう思ったわ、まああんたはそうした娘ね」
「あたしはあたしよ」
「そうよね、よくも悪くも」
「いいのよ」
このことはきっぱりと言ったガラスの猫でした。
「あたしは今のままで充分以上に満足しているから」
「誰も羨まないで」
「そう、寝ることも食べることも必要ないしいつも動けるし」
これはガラスの身体だからです。
「しかも決して割れたり曇ったり壊れたりしないし」
「魔法のお陰でね」
「こんなにいいものばかり持っているのはあたしだけよ」
「だからこそなのね」
「あたしは誰も羨まないのよ」
そうしたことは想像すらしないというのです、こうお話をしてです。
一行は今はお茶とお菓子を楽しみました、そのうえでオズマとの冒険の旅に出発する時を待つのでした。
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