十一匹め
[1/3]
[8]前話 [1]次 最後 [2]次話
シェルムの来訪をやり過ごし、シラヌイがやった実験結果を考察しつつ時折来る客に対応している内に、昼になった。
「しらぬいー。おきろー。おーい」
ボーデンが膝の上で寝ているシラヌイに呼び掛ける。
「きゅぅ…?………くぅ…くぅ…」
「二度寝すんな起きろ」
「きゅあぁ〜っ…」
と伸びをしたシラヌイが再びぐでぇっとなる。
そして、十秒ほどするとボーデンの膝から降りた。
「メシにするぞシラヌイ」
「ごはん?」
獣化を解いたシラヌイが聞き返した。
「おう」
「いらないよ。じゃあね、ボーデン」
そのまま裸足でペタペタと店の表に出ようとするシラヌイをボーデンが引き留めた。
「待てコラ。どうする気だ?」
「適当に錬成した物売ってからなにか買うよ」
シラヌイは昨日と同じように、水晶を造るつもりだった。
「却下だここで食え」
「迷惑でしょ?」
「じゃぁお前も手伝え」
「んー。わかった」
ボーデンに手招きされてシラヌイはキッチンへ通された。
「ボーデン。どんな材料がある?」
「大抵の物はあるぞ」
「じゃぁなんか適当につくるよ」
side in
現在、アタシは目の前の狐耳ショタの行動を注意深く観察していた。
このショタは『何か』を知っている。
さっきの燃素説否定実験もそうだが、妙に大人びている気がする。
「ボーデン。こむぎこ、しお、たまご、さとう、ぎゅうにゅう、もくたんってある?」
テーブルに座ったシラヌイがアタシに尋ねた。
「あるぞ」
「つかっていい?」
「おう」
「やった!」
でもなぁ…。この笑顔なんだよなぁ…。
この純真無垢で屈託の無い子供の笑顔。
こんな子供がいったい何を知っているんだって話だよ。
言われた材料をボウルと一緒に渡すと、何やら魔法を使い出した。
「くりえいと!えぬえーえいちしーおーすりー!」
塩と木炭と水から白い粉末を錬成した。
「シラヌイ、その粉は?」
「できてからのひみつ!」
ほら、また私の知らない物だ。
シラヌイはなんと言った?
『エヌエーエイチシーオースリー』?
そんな物質は聞いた事がない。
その間にもシラヌイは塩、砂糖、小麦粉、『エヌエーエイチシーオースリー』を混ぜた。
そこに牛乳と卵を割って入れた。
シェルム先生の息子って事だから箱入り息子で料理経験皆無と思っていたが、なかなかに器用な奴だ。
「ボーデン。あわだてきある?」
「あー…あるけど薬品用だな」
「つかえねー」
「おい今なんつったコラ」
「じゃぁふぉーくちょーだい」
[8]前話 [1]次 最後 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ