暁 〜小説投稿サイト〜
ソードアートオンライン 無邪気な暗殺者──Innocent Assassin──
Alicization
〜終わりと始まりの前奏〜
紅雨
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六王全体が抱える問題点でもある。

シゲクニは頭脳(ブレイン)として、永きにわたって六王を支えていたが、それにしたって効率を優先させることに重きを置いていた。慎重策を選ぶ時は、攻略組の士気の低下を懸念してのこと。暴走はしないが、怯えることもない。それが狼駕の知っている《千手》シゲクニだ。

だが、それで危なっかしいこともなく、クォーターポイントを除けば目立った死者も出さないあたりが、あの老人が六王たる所以なのかもしれないし、その性格あってこその財政の怪物なのかもしれないが。

―――しかし、あの二人がわざわざ慎重策に打って出るのは……。

考えにくい。というか、考えられない。

ならば答えは一つ。

「……もう一人いるな」

あの二人の他に一人。いや、あの大御所達の気質をコントロールし、その上で捻じ伏せているのだから、上に一人というべきか。ともかく、指揮系統の頂点はヴォルティス・ヴァルナ・イーゼンハイムでも黒峰重國でもなく、実在不詳な人物が座しているようだ。

それが一番可能性が高い。否、一番理解できる。

―――やれやれ。敵は強大、内は謎。こんなんで本当に大丈夫なんだろうね?

しかし実際のところ、そんな状態で淀みなく回っているのが現状だ。

老練なシゲさんをも手玉に取るとは、よほど熟達した人心把握術でも持っているのだろうか。そうであるならなかなか曲者だし、第一何を考えているか、結論をどこへ持っていくのか分からない底の知れなさはあるが。

情報漏洩を危ぶんで、というのは分かるが、下っ端としては疑わしいことこの上ない。

「ま、それこそ下っ端の考えることじゃないか……」

ふむ、と顎を撫でるように触れ、狼駕は手持無沙汰の現状に気付く。

見送りに来たとはいえ、実質蓮の送迎係だ。さすがに安っぽい昭和の恋愛ドラマじゃあるまいし、飛んでいく飛行機を見送るほどじゃない。

しかし帰るといっても、会社を途中で抜け出してきた関係上、行けるところと言えば家くらい。が、家にはあくせく働く夫を想う妻がいる。理由があるとはいえ、後ろめたいことこの上ない。こんな時くらいは、能天気なウィルの気質が羨ましい。

仕方がない。適当にブラついた後、素知らぬ顔で帰るのがほどいいトコかな、と適当に思う。

しかし何となくあの妻はそんな思考も読んでいるような予感がして、その板挟みに青年がうんうん唸っていると、肘のあたりに軽い衝撃があった。

「あっ、すいません!」

見ると数人のCAのお姉さんがおり、そのうちの一人(ドジっ娘枠)が深々とこちらに向かって頭を下げていた。どうやら外国人のツアー集団の列を急いで抜けようとした結果、勢い余ってぶつかってしまったらしい

平日とはいえ、羽田は世界でも指折りの"忙しい"空港
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