暁 〜小説投稿サイト〜
ソードアートオンライン 無邪気な暗殺者──Innocent Assassin──
Alicization
〜終わりと始まりの前奏〜
雨気
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ならではのこだわりが感じられる。キーボード製は信用しないというまで敏感ではないが、手書きの文字は筆跡や筆圧などから推測される書き手の感情など、無機質なデータより多くの情報を得られる。
ヤギを彷彿とさせる豊かな顎ヒゲをさする黒峰重國は、がさがさと紙の擦る音に囲まれる。
彼が見ているのは手元だが、その視線はどこか茫洋とここ以外のどこかに思考を飛ばしている。それは老人一人にしかわからない。
今している――――というかここ最近ずっとしているのは、今や世界の重鎮達共通の話題であろう、小日向相馬に関するものだ。
世界単位での
技術的特異点
(
シンギュラリティ
)
。
アインシュタインやエジソンなど目ではない。ある意味では工業革命やIT革命と同レベルとも目される、黄金を生むガチョウのようなあの男に関する情報とあれば、もはやそれ自体が裏の経済を動かす原動力となりつつある。
―――いや、それ自体が目的なのか?小日向相馬の登場以降、良くも悪くも裏の世界は彼一色じゃ。
法律とは秩序を民に提供するためのもの。つまり民のためのモノというのが一般的だが、見方を変えれば当然違った受け取り方も存在する。
それが、少人数で運営するための潤滑油、としての側面だ。
国家という単位の根底は、所詮は猿の群れの頃から変わっていない。変わったのは規模なだけで、アタマが行う統治という行為も、その意義は群れを操って効率よく狩りを成功させる時代からそこまで変化はないのだ。違うように見えるのは、規模の拡大に伴って入ってくる諸情報が等比級数的に増加しただけだ。
だが、規模の拡大と一口に言うけれど、そこには当然群れの頃と比べれば弊害が出てくる。
それが、従えさせられないという問題。あるいは伝言ゲーム、あるいは主義の相反など、人が集まればそれだけ上から下への命令は滞っていく。
だがそこに、ある一定のルールを設ければ、それはもうスポーツと同じ競技になる。つまり、善悪が生まれる。これによって従わぬ者は排除でき、ルールを牧羊犬のように弄ることにより民を操ることもできるという訳だ。
さて。
この話から分かる通り、一定の法則は大規模な群れをある種操作しやすい状態に陥りさせる。そして、そのルールを操ることができる者は羊飼いのような、群れの一員とは一線を画す存在へ昇華できるのだ。
「……この場合は小日向相馬。当人ならば情報の操作もお手の物じゃろうしなぁ」
だが、子供向けアニメに出てくる、やたら偉そうでギンギラギンな恰好のラスボスみたいに、世界の支配なんてチープな最終目標はあの男は持っていないのだろう。だからこそ厄介なのだが。
―――おそらく、それも方法論で通過点に過ぎんのじゃろう。第一、小日向相馬はこの場合、台風の目ではあるが実際の力を持
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